ムンジアルが終わって寂しい気分の柔術大好きな皆様、こんにちは。taikiです。
最近、クラウドファンディングが身近になってきて、柔術界でもチラホラと実用例が出るようになってきました。そんな中、柔術界の大型クラウドファンディングとして注目を集める渡辺直由先生の柔術キャンププロジェクトをご存知の方も多いことでしょう。
石垣島で柔術とマリンレジャーの融合という新しい試みです。
「レジェンド柔術家の新しい取り組みをとりあげないなんて三角絞め研究所じゃない!」ということで、渡辺直由先生に会って話を聞いてきました。
前編では、柔術キャンプへの想いや今回のクラウドファンディングについて、後編ではレジェンド柔術家から見える柔術最前線という視点で話してもらいます。
渡辺直由先生の基本情報
名前:渡辺 直由(わたなべ なおよし)
生年月日:1975年8月4日
身長:175㎝
体重:ライト級
所属:Island BJJ Basecamp Ishigaki
出身:東京都千代田区
関連サイト:
Twitter、ブログ、Instagram、Facebook、クラウドファンディング
主な戦績:
ヨーロピアン選手権2006 アダルト茶帯ライト級優勝
世界選手権2007 アダルト黒帯ライト級ベスト16
柔術キャンプに辿り着くまで
taiki
読者の皆様、こんにちは。
本日は、レジェンド柔術家の渡辺直由先生(以下、ナオ先生)にお越し頂きました。ご存知の方も多いと思いますが、ナオ先生の新たな取組として石垣島柔術キャンプを立ち上げました。クラウドファンディングにて協力を募った所、あっという間に目標額を達成したことはご存知の方も多いと思います。
今回は、柔術キャンプのことを中心にお話を伺っていきたいと思います。
ナオ先生、本日はよろしくお願いします。
こんにちは、渡辺直由です。こちらこそよろしくお願いします。
ナオ先生
石垣島で柔術道場は難しかった
taiki
まず最初にナオ先生のことを知らない人の為にも簡単に経歴を紹介したいと思います。
- 歌手としてCDデビュー
- 総合格闘技→柔術
- トライフォース立ち上げに参加
- 怪我の為、競技柔術から退く
- 石垣島に移住し、漁師になる(←今回はこのあたりから)
- 柔術キャンプを立ち上げる
異色の経歴とはまさにナオ先生の為にある言葉ですね。
もっと詳しく掘り下げたい方はこちら。
はい、紆余曲折を経て石垣島で暮らしています。
ナオ先生
taiki
最初から聞いていると今回のプロジェクトに辿り着けそうにないので、石垣島に移住したあたりの話からお聞かせください。
はい。
ナオ先生
taiki
2011年に石垣島に移住してから常設柔術道場をやることになりましたが、思うように軌道に乗らずにご苦労されたと伺っております。首都圏で柔術道場を開くのとどんな違いがあったのでしょうか。
こっちに来て東京とのギャップを感じたことは大人が習い事をするというカルチャーがあまりないといことでしょうか。柔術だけでなく警察署主催の無料の柔道であってもあまり人が集まらないようです。
ナオ先生
taiki
他の地方の方からも同じような悩みを聞いたことがあります。
人数が少ない中で練習回数を増やすと人が分散するし、みんなに合わせると練習回数が減ってしまい練習環境を整えるのが大変でした。柔術は組技なので人が集まらないと練習が出来ません。
ナオ先生
taiki
1人でエビしていても限界がありますからねぇ、、、
なかなか運営が安定しないこともあって2012年に道場は閉鎖して、体育館で週1回で練習をするといったペースで柔術を細く続けていました。
ナオ先生
柔術をやりたい仲間の為に環境を作りたい
taiki
この度、柔術キャンプとして常設道場を再びやることになりましたが、石垣島に移住した2011年頃と2019年とでは石垣島の柔術環境もだいぶ変わってきたのでしょうか。
全然変わってませんよ(笑)
ナオ先生
taiki
え!?そうなんですか?
にもかかわらず、今回もう一度常設道場をやろうと思ったキッカケは何だったのでしょうか。
今回の立ち上げメンバーでもある比屋根さん、住吉さん、関口さんから「常設道場をもう一回やりませんか」と声をかけられたことがキッカケです。
普通に柔術の常設道場だとうまくいかないのは過去の体験でわかっていました。その一方で、せっかく柔術をやりたいと言ってくれる仲間がいるのでその人達の為にも練習環境は提供したいなぁと考える自分がいる。
その時は「やりましょう」とは言えずに「ちょっと考えます」と答えました。その後、どうしようかなぁと考えるようになったのです。
画像:柔術仲間と企画会議
ナオ先生
taiki
過去の経験から何か知恵を絞らないとうまくいかないと冷静に考えたのですね。
はい。もともと私は子供の頃からアウトドアで行うキャンプが好きで石垣島に来ていた縁がありました。また、最近ではBJJ Training Campと称して柔術合宿が世界中で行われていたりします。
それにヒントを得て私が好きなリアルキャンプと柔術キャンプと融合しちゃえばいいんじゃないかと考えるようになりました。
ナオ先生
taiki
柔術キャンプはガチなコンペティションキャンプからやや緩めのキャンプまで世界中で開催されていますね。国内でもカルペ・ディエムがアジア選手権の前にガチな柔術キャンプやってました。
幸い10年前と比べて柔術の試合に出て観光したり、旅行先で出稽古して地元の美味しい料理を楽しんだりとリラックスして格闘技を楽しむ人が増えました。
そんな方々にも、石西礁湖(せきせいしょうこ)と呼ばれる国内最大のサンゴ礁郡がある石垣島も楽しんでもらいたい。
しかも私自身が漁師であるから海だって案内出来る。
ナオ先生
taiki
出稽古の醍醐味!
そうですね。石垣島に来て出稽古の楽しさを味わってくれれば嬉しいです。
別に石垣島じゃなくたっていいですし、全国各地に柔術キャンプを名乗る場所を作ってもらって、そこに出稽古に来た人たちが地元の美味しいご飯や自然を楽しんで活性化すればいいかなぁと考えました。
画像:練習後は沖縄料理
ナオ先生
taiki
もはや、柔術から日本の観光産業の話になってきました。
とは言ってもまずは一発目の石垣島柔術キャンプを成功させないとですね(笑)
多くの人に石垣島に来てもらって、柔術を楽しんでもらえたらそれだけで嬉しいですし、石垣島で柔術に取り組む仲間達もいろんな柔術家と練習が出来てとても嬉しいですよ。
画像:ナオ先生もスパーリングに参加します
ナオ先生
唯一の不安は天候
taiki
柔術キャンプを行う上で、不安なこととか心配していることは何かありますか?
石垣島に来て頂いたら楽しんでもらえる自信はありますが、どうしても天候の不安はあります。こればっかりはどうしようもない(笑)
海がダメならイグアナツアーとかハブ・大コウモリみたいな企画を考えます。
画像:爬虫類が好きな人は楽しめます
ナオ先生
taiki
イグアナはちょっとみたいかも(笑)石垣島ならではの飛び道具がたくさんあるようです。
私がお話を聞いていて思ったのが、家族と石垣島に来る方が家族やお子さんを気にせず出稽古を楽しめるようなメニューがあるといいかもしれませんね。
星空ツアーとかご家族にも喜んでもらえそうなネタはあるので、細部はこれから企画を練って検討したいと思います。
ナオ先生
柔術クラウドファンディング先駆者として見た風景
クラウドファンディングは柔術の試合と同じ
taiki
今回、石垣島柔術キャンプにクラウドファンディングを活用することになるのですが、どういったキッカケだったのでしょうか。
クラウドファンディング(Crowdfunding)
不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。
出所:Wikipedia
僕自身はクラウドファンディングは少し知ってる程度で、詳しいことはよくわかっていませんでした。
みんなで話している中で、「クラウドファンディングってどうなんですかね?」と聞いた所、今回の立ち上げメンバーでもある住吉さんが実は専門家だったということがわかりました。
ナオ先生
住吉さんはクラウドファンディングのセミナーもやっているプロの方!
柔術キャンプ設立メンバー住吉優さんによる石垣島でのクラウドファンディングセミナーです!
彼がいたからクラウドファンディンが成功したのは間違いないのですが
実は住吉さんがクラウドファンディングのプロだと言うのは設立を決めた後に知りました。偶然にしては出来すぎなので運命を感じます👊 pic.twitter.com/dcF5OHiNy2
— Island BJJ Basecamp 石垣島 渡辺直由 (@Island_BJJ) 2019年6月5日
企画自体がクラウドファンディング向きで、いけるんじゃないかということになって、いろいろ教えてもらいながら進めました。
ナオ先生
taiki
おお!これぞ柔術ネットワーク!
柔術でつながる仲間にはいろんなプロがいて、必要な時に力を貸してくれるという柔術ならではの良さですよね。
はい。「宣伝効果もあるのでやってみよう!」となりました。
画像:クラウドファンディングやってみた!
ナオ先生
taiki
現時点で既に目標金額には達していますが、やる前は集まらなかったらどうしようといった不安はなかったのでしょうか。
クラウドファンディングは金銭的なリスクを最初に背負う話ではないので、やってみて結果は結果として受け止めればいいと考えていました。
クラウドファンディングでお金が集まらなかったとしても最低限のお金は用意していましたし、柔術キャンプも船を所有せずに小さくリスクの少ない形で始めるつもりでした。
ナオ先生
taiki
最初のお金を自分たちで用意した上で、クラウドファンディングを援護射撃的に活用するのは理想的な使い方です。
盛大にクラウドファンディングを打ち出してみたもののイマイチ話題にもならずに終わると格好悪い的な気持ちはなかったのですか?
私は打たれ強さはあるのでそれぐらいでは落ち込みませんね(笑)
望まないような結果になったとしても結果は結果として受け止めて、何が悪くて、次にどうすれば良くなるかを考えればいいじゃないですか。
ナオ先生
taiki
ポジティブ!
失敗を恐れて一歩踏み出す勇気が持てない人の背中を押す言葉です。
ある意味、クラウドファンディングは柔術の試合と同じです。
やってみることが大事。
画像:クラウドファンディングは試合!?
試合だって、出たら勝てるかもしれないし、負けるかもしれない。試合は出る前は不安です。失神して格好悪い姿を晒しちゃうかもしれないし、怪我だってするかもしれない。けど、出ないことには始まらないし、出場したら結果が出る。
その結果を受け止めてどう考えて、次に何をするかですよね。
ナオ先生
taiki
示唆が深いです。
「あれこれ考えるのであれば、やってみて考えろ」というのはクラウドファンディングや柔術の試合だけではなく、人生を楽しく過ごすのに必要なものに違いありません。
クラウドファンディングの苦労
taiki
クラウドファンディングで注意したこととか気をつけたことって何かありますか?
お金を集めるだけ集めて見合ったことをやっていないと言われないようにすることでしょうか。
あたりまえのことですが、道徳に反するようなことはしたくはないですから。
ナオ先生
taiki
では、クラウドファンディングをやっていて大変だなぁって思ったことは何かありましたか?
簡単にお金が集められる印象を持っている方もいるようですが、実際にやってみてどうだったのでしょうか
クラウドファンディング自体の準備は特に大変ってことはないですよね。
企画を考えて、文章にして、修正してという作業には時間がかかりますが、それ自体は自分がやりたくてやっているのでとても楽しいです。
あとはありがたいことに質問をしてくださる方が結構いらっしゃるので、それを1件1件対応するのが意外と大変です。
ナオ先生
taiki
いろんなことを妄想しながら企画を考えるのって楽しいですよね。私も三角絞め研究所の記事を考えてる時間が楽しいですけど、実際に書きはじめると意外と大変。。
逆に、地元の漁師の先輩方にお願いして船を止める場所を確保したり、農水省に船の申請をしたりといった準備が大変でした。
一般人を同乗させると漁船とライセンスが異なってくるので手続きが地味なのですが苦労します。面倒で手間がかかる事が多くて、挫折しそうになりますよ。
画像:船の置き場を確保するのも大変です
ナオ先生
taiki
真面目にサービスを提供しようとして、適切なプロセスを踏むと普通に大変だという経験は誰しもがあると思います。
クラウドファンディングの表の派手な部分だけではなく、裏にある苦労を想像出来るようにならないといけませんね。
柔術家の為のクラウドファンディング
taiki
最近、柔術界でもクラウドファンディングを活用する方が少しずつ増えてきましたが、ナオ先生からはどのように見えるのでしょうか。
今回のムンジアル遠征費という名目で大望さんはクラウドファンディングを活用していましたよね。
私は使いたい人は積極的にクラウドファンディングを活用したらいいと思っています。
もちろんウソをつくことや自分が出来る限界は伝えないのはダメですよ。
ナオ先生
taiki
クラウドファンディングも新しい手法なので、まだ根付いていない感があって、違和感を覚える方もいらっしゃるようです。
例えば、若い柔術家がムンジアルを目指しますが、ムンジアルで勝ったからと言って大きな賞金が出るわけではないですし、渡航費は自腹です。私自身も若い頃はいろんな人に「なんでそんなお金にならないことやってるの?」と言われることもありました。
当時は何を言われているのかよくわかりませんでした。それでもムンジアルを目指しちゃう何かがある。
画像:柔術家の憧れムンジアル最終日
ナオ先生
taiki
確かにムンジアルは見る側もわくわくします。
そんな若い柔術家が遠征費用を稼ぐために、バイトして練習時間が削られちゃうのは本末転倒な気がするわけですよ。せめてクラウドファンディングでお金を募ってみるぐらいは良いと思うんですよね。先程も言いましたが試合と同じでやってみて結果が出てから考えればいいじゃないですか。
集まらなかったらそれはそれとして受け止める。企画が弱かったのか、実績が足りないから信頼されなかったのか、みんなに愛されていないからなのか、自分なりに出た結果を受け止めて考えればいい。
支援したい人しか支援出来ない仕組みなので、誰にも迷惑はかけてないのですから。そういうツールが1つ増えたというだけでも嬉しいことだと思いますけどね。
ナオ先生
taiki
おっしゃる通りで共感できない人は参加しなければいいだけなんだから、積極的にツールの1つとして使ってみるべきですね。
今回はクラウドファンディングで多くの方に支援してもらいましたが、柔術キャンプをうまく軌道に乗せたら、逆に支援する側にまわりたいですよね。
せっかくこのような機会を頂いたのですから、それで終わるのではなく、次につないでいかないといけないなぁと感じています。
ナオ先生
taiki
自分がしてもらったことを次の世代につないでいく好循環を作りたいという事ですね。
クラウドファンディングを楽な資金集めと短絡的に捉える人がいる一方で、ナオ先生のように次につなげていく新しい経済のインフラと長期的な視点で捉えて、経済を回していくと考えたほうが人類は豊かになることでしょう。
それでは最後になりますが、ナオ先生から一言お願いします。
インフラ:
私的経済活動の基盤となるような施設,制度などをさし,長期にわたって変化の少いものをいう。具体的には,電力などのエネルギー産業,道路・港湾などの輸送施設,電信・電話などの通信施設,都市計画における公園,上下水道,河川などの都市施設をさす。都市整備と産業発展をはかるうえでは欠かせないものである。
出所:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
クラウドファンディングにご協力頂いた皆様、興味を持ってくれた皆様、ありがとうございます。
画像:まだまだチャレンジ中
お金が集まればその分だけ提供できるサービスが充実してきます。クラウドファンディングも締め切りまでまだ時間がありますので、私のことを直接知らない方も石垣島に遊びに来るキッカケとしてご支援頂けると幸いです。
石垣島に来て頂ければ十分に楽しんでもらえる自信はありますので、ぜひ、石垣島の柔術キャンプにお越しください!
ナオ先生
taiki
ナオ先生、本日はありがとうございました。
後編ではナオ先生からみた柔術最前線について聞いていきたいと思います。
まとめ:柔術が結ぶ絆で動かす経済活動だってある
柔術をやることの面白さの1つに、柔術を通じていろんな人に出会えて仲間が増えることがあります。今回の柔術キャンプも柔術を通じて出会った仲間がクラウドファンディングというツールでサポートすることによって具現化されようとしています。
ぜひ、柔術キャンプに何かしたいと思った方は無理のない範囲で協力してみてください。
クラウドファンディングに参加した方は、石垣島に行くキッカケにもなりますし、柔術仲間が増えるキッカケにもなります。また、知らない土地で知らない道場を尋ねるよりもクラウドファンディングで支援した道場の方が出稽古に対するハードルも下がることでしょう。
さらに、ナオ先生は将来的にクラウドファンディング卒業生として支援側に回りたいという考えもお持ちでした。この視点こそが、経済に好循環をもたらして、いつの日か大きな資本を呼び込み、大きな経済活動を生み出すのでしょう。クラウドファンディングがしっくり来ていない方は、そんな大きな視点を持ってクラウドファンディングを捉えてみてください。
以上「渡辺直由先生に聞いてみた!前編 柔術キャンプを石垣島に作る話」でした。
後編では、ナオ先生から見た柔術最前線について聞いてみたいと思います。
柔術キャンプに興味を持った方はこちら
クラウドファンディングはこちらになります。興味を持ったり、石垣島で柔術したら楽しいなぁと思った方はぜひ、無理のない範囲で検討してみてください。
コメント
[…] こんにちは、taikiです。 前回に引き続き、渡辺直由先生のインタビュー後編です。 前編では柔術キャンプとクラウドファンディングについてのお話を聞いてきましたが、後編ではレジェンド柔術家からは柔術最前線がどのように見えるのかについて伺ってきました。若くて現役バリバリの選手の試合をみて、感じるものがあったようです。 […]