格闘ドカタ対談!総合格闘家 青木真也 vs. 柔術家 橋本知之 後編

こんにちは、taikiです。

前回の青木選手、橋本選手の対談はいかがでしたか?まだ読んでいない方は前編から読まれることをおすすめします。
後編では、新世代柔術家のキャリア論と格闘家の強さのもう一つの源である宗教論という斬新な切り口で語って頂きました。

お楽しみくださいっ!!

柔術キャリア論

青木選手からみた橋本選手

avatar

青木選手

以前、ZSTで橋本さん、宮田さんvs宇野さん、嶋田さんのグラップリングマッチありましたよね。

総合格闘技のお客さんの前で変に意識して派手な技をやるのではなく、橋本さんと嶋田さんがパスガードの攻防をしっかりとやって見せたのが凄く面白くって共感できたんですよ。

それしか出来ないですよ(笑)

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

橋本さんと嶋田さんは柔術において個人の力量で名前が売れてきた選手であって、新世代柔術家の最先端を行っているのかなぁって勝手に思っています。

これまでは柔術で黒帯になって自分の道場を開いて、といった方が多かったのですが、海外で積極的に練習して最先端の技術を持ってくるようなことをやる選手はあまりいなかったので興味深いです。

アスリートとしては正しい方向で、若い柔術家が参考にするのはこの2人の選手なんじゃないかと。

avatar

taiki

橋本さん、青木さんのコメントを聞いてどうですか?

将来のキャリアプランとか何も見えてないですけどね。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

やったことある人がいないから先のことなんて見えていなくて当然ですよ(笑)

ちょっと変人の部類ですよね。

けど総合格闘技は総合格闘技をやらない人も惹きつける力がありますが、柔術は柔術をやらない人を惹きつけることは難しいです。

市場がまだまだ小さい。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

総合格闘技は瞬間的にそう見えるだけ。

海外でセミナーを開催出来たり国内でも橋本さんに習いたいっていう人がいるのは、ジャンルに限らず凄いレベルだと思います。

僕自身が柔術の技を習うのが好きだったし、教えるのも好きなので、技だけで食えるようになりたいです。

プライベートレッスンやセミナーだけじゃなくてオンライン動画も含めて。今、見据えているのはその領域です。

うまくなりさえすれば、試合でも勝てると考えていますし、試合で勝つことによって「技を教えて欲しい」と声をかけてもらえる機会も増える。

試合に出て勝つモチベーションは僕の場合はそこです。

avatar

橋本選手

トップ柔術家から見える最前線とお金の話

avatar

青木選手

技だけで食えるようになりたいことに対して、今の柔術界は橋本さんからはどう見えているのですか?

いろんな国で柔術のセミナーをやっていて、日本は技術にお金を払うカルチャーが他の国よりも低いなぁと感じることはあります。

日本は無料で良いサービスを受ける機会が多いからサービスに課金する文化が希薄といった背景は関係しているのかもしれません。

韓国では日本より高い価格でセミナーを開催しても日本よりも人が集まります。


画像:セミナー@韓国

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

確かにそれはあるかも。僕もたまに海外でセミナーやるけど海外の方が単価は高い。

韓国だと8,000円ぐらいの価格設定でも結構参加者が集まる一方で、日本だと5,000円でもあまり集まらなかったりします。

avatar

橋本選手

avatar

taiki

以前東京で開催した橋本さんのベリンボロセミナーは結構集まっていませんでした?

あれは50人ぐらい集まって頂きましたが、出稽古感覚で来れる価格設定でもあったので道場がパンパンになるのをイメージしていました。

東京にはもっと柔術やっている人いるはずなのですが、、、

あと、海外の方が道場の月謝も高いですよね。日本はそれに比べると安い。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

Evolveとか月額3万円ぐらいするもんね。

けど、セミナーを通じて色んな所に行けるのは良いんじゃない?

Evolve
シンガポールを拠点にする著名な選手が多く所属するジム。

詳細はこちら。

はい。特にアジアは柔術セミナーに対する需要と供給のバランスが良いです。

アメリカは選手がたくさんいるので、あえて僕がセミナーでいく必要性は感じません。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

東京で教えつつ、長期間海外遠征をさせてもらえる環境を勝ち取ったのはスゴイことですよね。

なぜ柔術家はムンジアルを目指すのか

avatar

青木選手

あと僕がよくわからないのが、多くの柔術家がムンジアルを目標にすることです。

渡航費も自費だし、賞金が出るわけでもないのに多くの柔術家があの舞台に惹かれてチャレンジするのはなぜなんだろうと純粋に思うんですよ。

ムンジアル
世界柔術選手権。国際ブラジリアン柔術連盟(IBJJF)が主催するブラジリアン柔術の世界選手権。ムンジアル(Mundial)という名称でよく知られている。
ファイトマネーが出るプロ興行ではない。
出所:Wikipedia

画像:ムンジアル決勝の会場

他の人はわかりませんが、僕の場合は、誰よりも柔術がうまくなりたいと考えています。

ムンジアルは現在開催されている柔術の大会の中ではもっともレベルが高いし、注目度があります。だからこそムンジアルで結果をだすことは価値がありますし、そこで勝つ人こそが柔術がうまい人だと思っています。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

なるほど、、、
ムンジアルで勝ったら柔術家やグラップリングの競技者の間では注目されて、名前が売れるのか、、、、、確かにそれは意味がありますね。

ただ、ムンジアルで1回優勝したからと言って劇的に人生が変わるわけではないですし、負けても目立つ選手もいますからねぇ。

金も名誉も実力の証明もみたいなあらゆる面で突き抜けているブッチギリのスゴイものではないです。

avatar

橋本選手

格闘宗教論!信じる者は強くなる

格闘家はなにかしらの信仰を持っている

avatar

青木選手

橋本さんは、普段はどんな柔術の練習をしているのですか?

自分の練習は、スパーリングと技の研究が中心です。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

スパーリングはどれぐらいの量をやるんですか?

バラツキはありますが、1日1時間弱ぐらいですかね。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

そうですよね。それを聞いて安心しました。

橋本さんの取り組み方だと多くの後輩達が橋本さんのように柔術を追求してみようかなって考えることが出来る。

avatar

taiki

人生のすべてを柔術に捧げるような狂気だと後輩たちも追随しにくいと。

avatar

青木選手

トップ選手がロック(※)すぎて一般の人が近づくことが出来ない領域に入っているとハードルがあがっちゃって後に人が続かなくなってしまいます。

逆に橋本さんのように尖りすぎず、コミュニケーションが普通にとれると後輩達も「俺も出来るっ!」と後に続きやすくなる。

※一般常識すら通用しないぐらいぶっ飛んだ人という意味だと思われます。

そうですね。僕は楽しく、健康的に柔術を続けたいです。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

それ!
楽しく続けることが大事。

あんまり入り込んで、何かを犠牲にして何かを得ると宗教っぽくなっちゃいますよね。

けど、ブラジル人とかが強いのは宗教の力もあるのかなぁと感じることはあります。

強い選手が十字を切って神に祈りを捧げているのを見たりすると、何かを信じることで大きな力を引き出すというのはありえるなぁって感じます。

画像:神に祈るアスリートは多い!?

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

うわっ!!宗教の話いっちゃう!?

宗教の力を使って自分の力を引き出そうとすると、日本人のような無宗教の民族は自分で何かしらの宗教や信仰を持つしかない。

トップ選手は何かしら宗教や信仰を持っていますよね。

みんな何かを信じてやっているんだと思います。

僕の場合は技やテクニックの力を過剰に信じているのでしょうね。

うまくなりさえすれば勝てると思っている。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

何かにすがるって大事。

それは人でもモノでも何でもよくって、練習量にすがる人もいる。

さっき橋本さんも言ったように本当は練習は一日1時間で十分であって、合理的に考えたら必要以上に肉体を酷使するような練習はいらないんですよ。

けど、練習量を信仰している人にとっては、「これだけ練習したから俺は絶対に負けない」って思えることがとっても大事。

avatar

taiki

どれだけルールを守って、お参りや巡礼に行ったかということですね。

avatar

青木選手

そうです。メンタルヘルスとして重要なのです。

逆に僕は試合直前に、練習をたくさんしてもそれが自信に変わりません。

むしろ理屈しか信じてないから、この技があるからこういう状況ならいけるとしか思えません。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

ああ、わかった。

橋本さんは不安を練習量で担保しているのではなく、知識量で担保していんだ。「これだけ技を知っているから俺は勝てる!」と。

理屈を一つずつ繋ぎ合わせて膨大な知識量にしないと担保出来ないのは、それはそれで大変そうだ。

avatar

taiki

直接会って聞いたわけではないのですが、ミヤオ選手は練習量を信仰しているのではないでしょうか。

ミヤオ選手は練習量を信じてますよね。それ以外にもビーガンになったり、ヨガやったりいろいろ試して信仰出来るものを探しているのかもしれません。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

ビーガンというか、食事も信仰だよね。異常にプロテイン飲むのも信仰。

僕もビーガン啓発動画を見て影響を受けて3日やりました。そして4日目に普通に肉食ってました(笑)

avatar

橋本選手

筋トレ論完全合意!?筋トレは無差別級のためのもの!

avatar

青木選手

筋トレも信仰だと思っています。完全に僕の仮説なんだけど、マッチョな人はマインドが弱い。だから筋肉でそれを補おうとする。


画像:実はマッチョはチキン?

わからなくはないですが、断定は出来ないです(笑)

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

いやいや、恐いから筋トレをする。筋肉を信仰しているのですよ。

確かに僕もメンタルが弱かった中学生の頃、筋トレしてました(笑)

今は筋トレはあまりやりません。周りの人達が筋トレやってると僕もやろうかなって思ってやり始めるのですが、続かないんですよ。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

筋肉があるやつが強かったら陸上選手最強ですよ。

けど、そうじゃない。

僕は筋肉は信仰出来なかった。

僕も筋トレやっても強くなってる感じがしないんですよ。

筋トレってすぐに効果は出なくて長期的なものみたいなことを言われるんですが、技は仕組みを理解できたらすぐ効果出ますよ(笑)

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

それはわかるなぁ。力の強さの前に、筋肉の使い方と力の伝え方なんだよね。

ベンチプレス○○○キロあげるみたいな人とはさんざん組んだけど、組むことに関して力が強いと思った選手はいなかったです。僕はベンチプレスをあげる力と組んだ時の力の強さは別だと思っています。

あとは柔術や総合格闘技は階級別の競技だからというのはあると思います。

無差別級の人が筋トレをガンガンやるのは理解出来ます。

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

そう。無差別級の競技は筋トレやったほうがいい。

野球とかラクビーとか陸上は無差別級なんだからデカイほうが強い。

avatar

taiki

野球とかラグビーが無差別級という概念をそもそも持っていませんでした。新しい発想(笑)

avatar

青木選手

それってずっと考えていて、身体の小さいアジア人がどう頑張っても勝てない競技はある。

野球は特に露骨ですよね。体重制にしたら戦い方も変わってくると思います。9人で合計何キロ以下みたいな。

確かに、それは変わりそう(笑)

avatar

橋本選手

avatar

青木選手

そりゃ変わるでしょ(笑)

格闘技は体重が同じぐらいだから身体能力ではなく、技術を競い合うから面白いんですよね。

格ゲーだって、キャラによってダメージの入り方が露骨に違ったら不公平でやっていても面白くないですよ。


画像:ゲームだって無差別級だと面白くない

avatar

橋本選手

avatar

taiki

柔術でも無差別級に出るのは勇気があってスゴイことだと思っていましたが、実は世の中のスポーツは無差別級の方が主流だったという事実(笑)

そろそろ最後になりますが、青木さん、橋本さんから何かありましたらコメントお願いします。

avatar

青木選手

橋本さんが理屈に拘る人で、僕と格闘技に対する根底の価値観も共通しているなぁと思いました。

Fight2Win、パンナムからムンジアルと大きな大会が続きますが、怪我に気をつけて頑張ってください。

あと、新著「ストロング本能」もよろしくお願いします!

青木さんも3月のOne日本大会頑張ってください。ストロング本能読みますっ!!

avatar

橋本選手

avatar

taiki

青木さん、橋本さん、本日はありがとうございました!

まとめ:格闘・柔術フロンティアを開拓する者同士であった

いかがでしたでしょうか?

青木さんも橋本さんも各々がそれぞれの道でフロンティアを開拓している最中というのが伝わってきましたね。格闘家の強さの背景にある信仰の話も双方から同じような話が出てくることが大変興味深かったです。

皆さんも信仰について考えてみてはいかがでしょうか?既に何かしらは信仰しているものがあるはずです。あまり考えたことのない視点かもしれませんが、自分のメンタルヘルスが何なのかを知ることによって、パフォーマンスがあがるかもしれません。

青木選手は3月のOne日本大会、橋本選手は、2月のFight2Win、3月のパン選手権と試合を控えています。ぜひ応援しつつ、青木選手、橋本選手の思考の部分を試合を通じて感じてみてください。

以上「格闘ドカタ対談!青木真也 vs. 橋本知之 後編」でした。

オマケ

青木選手の新著「ストロング本能」です。

ZSTでのグラップリングマッチです。

今回の記事で青木選手と橋本選手に興味を持たれた方はこちらも合わせてお読みください!

青木真也選手に聞いてみた!前編 ストロング本能への道
こんにちは、taikiです。 これまでに三角絞め研究所ではいろんな方に登場して頂きましたが、今回もスゴイですよ。 やりましょう。 青木真也 shinya aoki GO!! (@a_ok_i) 2019年1月15日 この...
青木真也選手に聞いてみた!後編 技の断捨離
こんにちは、taikiです。 前回に続き、青木真也選手のインタビュー後編をお届けしたいと思います。 前編では新著「ストロング本能」とそれにまつわる青木選手の思考を中心に話を聞きましたが、後編はもっとマニアックに柔術の技の話や青木...
柔術Youtuber Tomoに聞いてみた!「俺はみんなの心の先生になりたいっっ!!」
こんにちは、taikiです。 先日のYoutuberの記事を読んだ多くの方から、「橋本選手のインタビューやるんですか??出来るんですか??」と問い合わせがありました。 私も直接お話を聞いてみたかったのと皆さんからのニーズもあったので...

コメント

タイトルとURLをコピーしました