こんにちは、taikiです。
以前の青木真也選手のインタビュー記事(前編・後編)は反響が大きくて、多くの方から前向きなご意見を頂けました。青木選手とのインタビューでは、記事に収まりきれなかった面白い話がたくさんありました。その中の1つとして、青木選手が注目する橋本知之選手の話がありました。
橋本選手といえば、かつて三角絞め研究所にも登場頂きましたし、実は読者会議(オフ会)にも来てもらったこともあるので、勇気を出して声を掛けさせて頂いた所、快諾頂きました。
異次元の2つの才能が出会ったら何が起きるのか、気になりますよね?この2人の出会いはヤバイだろうなぁと思って、私もドキドキしています。
お楽しみくださいっ!!
基本情報
青木真也選手
名前:青木 真也(あおき しんや)
生年月日:1983年5月9日
身長:180㎝
体重:ライト級
出身:静岡県静岡市
主な格闘技歴:柔道、ブラジリアン柔術、総合格闘技
主な獲得タイトル:
第8代修斗世界ミドル級王座
第2代DREAMライト級王座
第2代ONE世界ライト級王座
橋本知之選手
名前:橋本 知之(はしもと ともゆき)
生年月日:1993年4月20日
体重:ルースター〜ライトフェザー級
関連サイト:Twitter、Instagram、Tomo BJJ Channel
主な戦績:
黒帯
2018 全日本王者
2018 ムンジアル3位入賞
2019 ヨーロッパ選手権準優勝
総合格闘技と柔術の違いと共通点
taiki
皆さん、こんにちは。
本日は、青木真也選手、橋本知之選手をお招きして、スペシャル対談を開催させて頂きます。青木さん、橋本さん、よろしくお願いします。
青木選手
格闘ドカタ青木真也です。
よろしくお願いします。
こんにちは、橋本です。
よろしくお願いします。
橋本選手
taiki
やはり避けては通れないあの話題「総合格闘家である青木選手から見た柔術」について聞いてみましょう。
青木さんから見た総合格闘技と柔術の違いってなんですか。
総合格闘技(Mixed Marshal Arts、MMA)
打撃(パンチ、キック)、投げ技、固技(抑込技、関節技、絞め技)などの様々な攻撃法を駆使して勝敗を競う格闘技の一つである。
出所:Wikipedia
画像:総合格闘技イメージ
総合格闘技にあって柔術に無いもの
青木選手
みんなによく勘違いされるのですが、僕は柔術は好きだし、柔術家もリスペクトしています。柔術の試合にも出ていたし、強い選手に試合でぶっ飛ばされたこともあります。
ただ、ピュアな柔術と総合格闘技からみた柔術は別競技です。
同じ技でも柔術と総合格闘技では身体の使い方や重心の掛け方も違ってきます。
総合格闘技の寝技と柔術の寝技が全然違うことは、総合格闘技を見ていると僕もよくわかります。
橋本選手
青木選手
柔術の技を見ていて発想が斬新だなって思うことはあるのですが、その技をやって面白いのかなぁって思っちゃう場面もあります。
もちろん、柔術からみた総合格闘技の寝技でも同じようなことはあるとは思のですが。。。
僕は総合格闘技を見るのが好きでよく見るのですが、青木さんは柔術は見ていて楽しいですか?
橋本選手
青木選手
柔術は見ていてもあまり楽しくない。
そもそも柔術は見て楽しむよりもやって楽しむモノですよね。
橋本さんは総合格闘技には興味ないのですか?
実際にやるのは打撃が恐ろしくて、、、
橋本選手
青木選手
それはわかります。
確かに恐いのですが、僕は生命のやり取り的なスリリングさにエキサイトするようになりました。
あのスリルを一回味わってしまうと柔術に戻った時にどうしても物足りなく感じてしまいます。
画像:生命の危機!!
見る分にはいいのですが、実際にやるのはちょっと。。
健康的に長生きしたいです(笑)
橋本選手
ステロイドをやらない理由は不幸になるから
青木選手
健康的って大事だよね。それ良いテーマ。
橋本さんはステロイド使ってないですよね?
はい。使ってません。
橋本選手
(筋肉増強剤としての)アナボリックステロイド
アナボリックステロイドは筋肉増強剤として使用されることが主で、ドーピング薬物として知られる。短期間での劇的な筋肉増強を実現するとともに、常態で得ることのできる水準を遥かに超えた筋肉成長を促す作用から、運動選手らの間で長年にわたり使用されてきた。
出所:Wikipedia
画像:ステロイド!ダメ。ゼッタイ。
青木選手
僕も使ってないんだけど、海外に行くと「使う?」と言われることありませんか?
僕は言われたことはないですが、あの人はステロイドやってるみたいな噂はよく聞きます。
橋本選手
青木選手
僕もステロイドはまじめに考えたことはあるんだよ。
本来は格闘技が好きで楽しいからやっていて、人生を幸せに豊かにすることが目的なはずなのに、「格闘技が(ステロイドをやってでも)強くなること」が目的になっちゃうのは違うんじゃないかなって思ったんですよね。
手段が目的になっちゃった的な。
それはそうですね。
柔術は総合格闘技に比べたらステロイド検査は無いに等しいので「あの強い選手はステロイドをやっている」という噂は出てきてしまいます。
その中で、カイオ・テハはステロイドをやらないことを強みとしてうまく利用していると思います。
カイオは「筋トレはやらない。テクニックが全てだ。」と言い切っていて、それを裏付ける実績もある。イメージ戦略として逆にエッジが効いてとても良い。
総合格闘技はどうなんですか?ステロイドをやっている人は多いのですか。
橋本選手
カイオ・テハ
柔術世界王者(2008,2013)、ノーギ世界王者(2008−2017)カイオ・テハの名言「Technology conquers all.」(超訳:テクニックはステロイドにも勝つ)はあまりにも有名。
詳細はこちら。
青木選手
実際にUFCでもバレている人がたくさんいるから、みんなステロイドはやっているものと解釈しています。
ただ、僕は「個人の自由だからステロイドをやりたきゃやれよ」って思っています。
繰り返しになりますが、結局、格闘技をやる目的って自分の幸せの為なので、強さを手に入れても結果的に不幸になるのであれば、その取引は自分にとっては価値はありません。
僕と橋本さんは柔術と総合格闘技の違いはあれど、楽しむためにやっているとう点は共通しているのかな。
総合格闘技から柔術にハマる人の特徴は理屈!
青木選手
総合格闘技と柔術という観点で面白いのが、総合格闘技をやっていたけど柔術にハマっちゃう人って多い。それまで大雑把に総合格闘技をやっていた人が柔術という理屈に出会ってハマっちゃうんです。
taiki
青木さんは逆のパターンじゃないですか?
画像:理屈とは論理であり、なぜそうなるかの理由!
青木選手
そうですね。
僕の場合は逆で、理屈でやっていたことを総合格闘技でも通用するのか試してみたかった。
僕もその理屈にハマりました。
僕は、はじめは格闘技を見るのが好きで、その延長で高校生の時に空手の道場に行ったんですよ。そうしたらあまり理屈がない。
橋本選手
青木選手
根性論だからね(笑)
画像:根性のイメージ
「スネが痛いけど、どうしたらいいですか?」って聞いたら、「まぁ、慣れだから」みたいな(笑)
その一方で、組技の本とかを読んでいて三角絞めとか知っていて、そっちもやってみようと思って柔術もやったのです。そうしたらすごく丁寧に説明してくれて、技の過程に理屈があって感動しました。
なんとなく強くなりたいと思っていましたが、技の一つ一つの動きに意味があることがわかって、目的が「技がうまく使えるようになること」に変わっていきました。
橋本選手
青木選手
理屈が1つずつあって、それがつながっていくのが面白いんですよね。それは凄くわかります。
理屈がつながっていく面白さがわかってくるとあとは競技によってやることが変わって来ますよね。
総合格闘技なら抑えて、ボトムにならずにトップをキープしてサブミッションを狙うだし、柔術ならスイープして良いポジションでトップをとってって話になる。
橋本さんは合理主義者だから、総合格闘技をやっても形に出来ると思う。そのことはライアン・ホールが証明してくれたと思っていて、合理的に考えて理屈を積み上げれば、自分が勝てる道をちゃん作れるんだなって。
とは言え、やっぱり総合格闘技は恐いです(笑)
橋本選手
青木選手
それはそれでわかる(笑)
ライアン・ホール
柔術から総合格闘技に転向した、現役UFCファイター。上下逆さまになるインバーテッドガードの使い手としても有名。
詳細はこちら。
橋本選手が聞いてみたかったこと
試合にのめり込む
僕は青木さんの試合を見ていて特にスゴイなぁって思うのは試合に深くのめり込める所です。
相手の腕を極めきってからのあのシーンを見て、そこまで入り込んでテンションあがってやっている姿に興奮しました。
それが良いとか悪いとかじゃなくって。
橋本選手
青木選手
僕は格闘技が本当に好きでやっているので、のめり込めるようです。
幸せなのでしょうね。
画像:のめり込んでいる試合の青木選手
僕は自分の試合でも勝っても負けても、「ああ、勝った」「ああ、負けたなぁ」みたいな感じであまり大きく変化しないんですよ。
画像:試合に勝ってもこの表情
橋本選手
青木選手
橋本さんっぽい。
僕は日常生活は一歩引いて客観的に物事を俯瞰して見ちゃうんだけど、格闘技みたいに熱中出来ることは客観性を手放せるので好きです。橋本さんもその一歩引いた客観性を手放した時にもっと爆発するんじゃないかな。
もちろん、今の橋本さんはそれはそれで魅力的だと思いますが。。。
試合の為に減量して、海外まで行って、負けたりすると悔しくて泣きそうになることはあるのですが、無く寸前で、「泣いてる俺、キモいっっ!!」ってなって泣けないんですよ(笑)
橋本選手
青木選手
橋本さんの場合は、その客観視出来ることが良いことであり、悪いことでもあるのか。。。きっと客観性を捨てたら、今みたいなスタイルはできなくなっちゃうのかも。
taiki
私は橋本さんの精神が大きく振れない所が好きです。淡々としていて、安心して見れる。それはそれの良さがあると思います。
昔はもっと心が振れていたのですが、それが辛くて、論理的に考えて落ち着かせるようにしました。
精神的に弱かったのを改善しようとして今みたいな感じにたどり着きました。
橋本選手
taiki
試行錯誤して今の橋本さんに辿り着いたのであれば、それで良いのではないでしょうか(笑)
試合以外の仕事でも客観性を取っ払っているのか
試合ではなくて、格闘代理戦争のような番組での振舞いはどうしているのでしょうか?
戦略的に考えた結果なのか、客観性を取っ払った結果なのかどっちなんですか?
橋本選手
格闘代理戦争(かくとうだいりせんそう)
2017年よりAbemaTVの格闘チャンネルで配信されている、格闘界に次世代スターを送り出す格闘ドキュメンタリー番組、格闘技中継番組。日本初の本格格闘技リアリティーショーを謳う。キャッチコピーは「格闘界に次世代スターを送り込め」。
出所:Wikipedia
青木選手
番組は考えた結果です。
試合は自分だけのいいとこ取りが成立する。殴り合いをせずに自分がサブミッションでコントロールして、相手の得意な技に付き合わなくても問題はおきません。
しかし、試合以外の仕事に関しては「攻防」が無いと成立しないので、ここは相手に譲って、そのかわりこの部分は自分がもらっていくといったことは考えてやっています。
taiki
「攻防」とは、トークでの掛け合いだったり、番組を盛り上げるためのやり取りのことですね。
格闘代理戦争におけるマッハさんとの絡みはこれに尽きます。
マッハさんとの絡みは「攻防」があって良いなって思ったのですけど、ルミナさんとの絡みはどうだったんですか?
橋本選手
青木選手
あれはルミナさんに青木の名前出してもらったから「攻防」をしなきゃと考えて行ったんですよ。
そうしたら、そういうのじゃなかった(汗)
途中で気づいたけど、引くに引けなくてどうしようって(笑)
そう思っていたんですね(笑)
橋本選手
taiki
青木さんも読み違えることはある(笑)
青木選手
そう(笑)。
とは言え、試合以外は何事も相手とシェアしないと結果的に自分も死んじゃうので、「攻防」を考えてやっています。
taiki
青木選手のバランス感覚がよくわかりました。
前編はここまでです。
後編では、新世代柔術家のキャリア論と格闘技と宗教というテーマで話を聞いていこうと思います。お楽しみに!!
まとめ:格闘技を楽しむという根底にある価値観が一緒でした
いかがでしたでしょうか?
青木さんも橋本さんも思考しながら格闘技を理屈で積み上げる過程を楽しんでいることが共通しているんだなぁと思いました。2人が相違点は、試合に入り込みきっちゃう青木さんに対して、橋本さんは一歩引いて見ていることでしょうか。今後、橋本さんが試合に勝って雄叫びをあげるようになったら、この対談がきっかけと思ってください(笑)
後編ではもっとディープな話になりますので、ぜひ後編も楽しみにしていてください。
以上「格闘ドカタ対談!青木真也 vs. 橋本知之 前編」でした。
後編に続く。
オマケ
今回の記事で青木選手と橋本選手に興味を持たれた方はこちらも合わせてお読みください!
コメント
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