はじめまして、港区オモプラッタと申します。
この度は、ご縁あって三角絞め研究所に記事を投稿させて頂くことになりました。
簡単に自己紹介させて頂きますとAOJオンラインが大好きな紫帯です。
よろしくお願いします。
今回は、忘れたころにやってくる見たことない技シリーズとして、70/30(≠50/50)という技を紹介させて頂きます。
50/50じゃない70/30というポジション
先日、AOJオンラインを見ていたら50/50ではなく70/30という題名のついた技を見つけました。
「メンデスがまた新しい技を産み出したのか!?気になる気になる!」と思い見てみたところ、説明しているのはジョナサ・アウベスという方でした。
この方は韓国で行われたスパイダーという柔術イベント(スパイダーガードではない)で茶帯になって一ヶ月と経たないうちに名だたる黒帯の方たちを倒して階級別で優勝、無差別級で準優勝となったノリにノッている選手です。
先日岩崎選手とも対戦しました。
彼の説明はこの程度でいいでしょう。私もそれぐらいしか知りません。
それではさっそく70/30の状態をお見せします。
X ガードから相手の足を持ち上げてバックに行く途中の姿ですね。この状況に70/30と名前をつけたようです。この状態からだと50/50にも行きやすいので、Xガードと50/50の中間のようなポジションでしょうか。
50/50の時よりもこちらのほうが有利ということですね。
このときは「わざわざ名前つける必要があるんかな?」ぐらいに思ってあまり意識していませんでした。だけど一度聞いたら忘れない名前であるのと、他のAOJのインストラクターであるニック氏も70/30を説明していたので、少し研究してみるかという気になりました。
↓ニック氏による70/30
(補足このニック氏は今年のワールドマスターでtaikiさんが対戦したAOJの選手のセコンドを努めていた方だと踏んでいます。ちっちゃいw)
AOJのテクニックライブラリーから「70/30」と打って検索してみると10個ほど上がってきました。最初の3つはハファエル・メンデスが説明しています。日付を見ると2016年の10月に出ています。ジョナサ・アウベスが作ったのではなく、ハファエル・メンデスが作った技だったのかといきなり勘違いを改めることになります。
テクニック動画10個見てわかったこと
実際に10個のテクニックを見て、わかったことをまとめたいと思います。
4つのエントリー方法
まず70/30には4つのエントリー方法があります。
- デラヒーバ
- バタフライ
- クローズドガード
- リバースデラヒーバ
上記4つのエントリーがAOJ Onlineで紹介されています。
この記事ではハファエル・メンデスのしているデラヒーバガードからのエントリーを紹介します。
襟とパンツを掴み、二の腕に足を当てたデラヒーバから
襟を引きながら相手の左足を右足で押して、頭を右にスピン(相手の右足はマットから離れているのが重要。ここからずっと相手の右足は浮いている)
デラヒーバの足を解除して相手の腰に当てる。
そこからエビでお尻を右にずらす(自分の左膝が相手の足より下にある)
右にずらしたお尻をまた元にもどす(ここでXガードの形になる)
右手で相手の右足をつかむ
右足を相手の左足にフックする
これがハファが紹介するエントリーです。
片足がずっと浮いたままというのはトップの人にとって非常に不安定な状態です。ここまで作れたら何とでもなるという感覚になります。なのでフィニッシュについては写真をつけて詳しく説明するのは辞めておきましょう。個人的にはすぐに相手の右足をくぐってバックテイクを狙うのが効率的だと思います。
3つのフィニッシュ
そして70/30を作ったあとのフィニッシュとしてはざっくり分けると3つあります。
- ただ立ち上がってスイープ
- バックテイク
- スイープしてからライイングレッグドラッグやベリンボロなどのモダンへつなげる
70/30というポジションは特別取り上げるものなのか
具体的なテクニックの話はここまでにして、ここからは70/30というポジションの存在意義というものを考えてみたいと思います。
そこからなぜあまりこの名前が浸透してこなかったのかもわかる気がします。
まずハファエル・メンデスは70/30の説明で下記のように話しています。
ハファエル・メンデス
このポジションはXガードの一種で、僕たちは70/30と呼んでいる
ハファエル・メンデス
Xガードで止まるな。攻め続けろ
Xガードに移行した時点でスイープかバックテイクが狙えます(三角絞め、オモプラータなどのサブミッションもありますが、今回は割愛します)。また、この70/30からは50/50にも行けるでしょう。
しかし、この時点で相手の片足は宙に浮いているし、襟を持って相手の頭を下げさせらていて相当有利な状況です。ここまで崩せているのならスイープ以上のもの、つまりバックテイクを狙いたいのです。
Xガードからバックテイクするときには、相手の足をくぐっていくというのがありますが、逃げられることが多いのですよね?そこでバックテイクを確実にするためのものが70/30というわけです。逆に50/50に移行してバックテイクを狙うのは手間が増えます。守りに徹したいならば有効な選択かもしれません。
マップで考える70/30
図にして整理してみましょう。
右に進むほど手数や時間がかかると思ってください。今回はゴールをバックテイクとしました。
Xガード、70/30、50/50からもバックテイクはできます。しかし、70/30からのバックテイクが一番確実です。
70/30とはXガードからスイープ以上のものを狙うときにする一手間、ようはエビやブリッジのように、動きの一つです。それ自体が新しいガードというわけではないのでベリンボロやワームガードのように広まらなかったのでしょう。
これは私の感想なので、人によってはXガードや50/50からバックテイクやサブミッションを取ることのほうが楽な人はいると思います。そういう方は70/30をはさむ必要はないでしょう。
70/30という名前をつけたことに込められた想い
なぜハファエル・メンデスはわざわざエビやブリッジのような1つの過程にすぎない動きに70/30という名前をつけたのでしょうか。そこに「このちょっとした一手間やディテールがとても大切なんだよ」というメッセージが込められていると感じました。
ディテールが問われるのはキワの攻防
ディテールが問われるのは、ガードを作るときよりもバックテイクやスイープといったポイントが発生するタイミングです。相手の防ごうとする必死さも当然違います。
そして強い選手になるほど、相手の攻めを防いでからの反撃が異常に速く、相手の攻めが失敗したときが最大のチャンスだと体でわかっています。
ガードを作って「エイヤ!」と攻めたけど、防がれ、パスされ負けてしまう、または、攻めたあとの反撃が怖くて何も動けすに終わり、パスのアドバン差に泣く、という経験を一度はしたことがあるのではないでしょうか。
体力や筋力に勝る相手に技を成功させる鍵はディテールなのです。
このディテールは、見かけからはわかりにくかったり、慣れていないとついつい後回しにしてしまってそのまま忘れてしまうということがあります。
70/30は結果にコミットしたディテール
70/30というディテールが意味しているものは「相手の片足を常に浮かせておけ」です。AOJのテクニック動画の中でハファエル・メンデスや他の指導者が説明するときに必ず言っています。このディテールを伝えるために70/30という名前をつけたと感じます。「70/30=相手の片足を浮かす」とすぐに脳内で変換できるように。
相手の反撃を許さず自分の攻めを完結する、そのためにあるのが70/30です。片足が浮いた相手は素早く動けません。こちらの攻めを防げませんし反撃はもっと難しいです。
70/30は恐ろしく結果にコミットしたディテールだと言えるでしょう。
「なんとなくガードは作れるけど試合では崩しきれないんだよなあ」という人はガードを作ることに拘りすぎてゴールまでの距離や線の太さを考えていないのかもしれません。自分だったらゴールまでのマップの中で、どの線が一番太いのか、どこを太くしたいのかを考えてみると技が整理できる上に課題が明確になると思います。
そして自分のゴールまでの道筋を強く太くするための70/30のようなディテールを追求してみてください。
まとめ:神は(70/30のような)細部に宿る!
70/30が流行らなかったのはXガードの一種であり、まったく新しい技というわけではなかったからではないでしょう。しかし、勝負を分けるディテールの大切さを体で覚えることが出来るという観点からは、70/30は学ぶ価値がありました。
ハファエル・メンデスは実際には70/30に関してこんな事は考えていないかもしれませんが、細かい思考の積み上げによってあのスタイルがあることは間違いないでしょう。
ハファエル・メンデスのような偉大な選手の細かい思考の積み上げを勝手に妄想して、試行錯誤しながら自分の柔術に取り入れることも柔術の面白さではないでしょうか。
以上「Xガードを止めるな!70/30へ行け!」でした。
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