こんにちは、taikiです。
前回に引き続き、柔術ツヨカワ女子、市川奈々美選手のインタビュー後編をお送りしたいと思います。
前編のインタビューでは、柔道をはじめてから強化選手、実業団を経て引退するまでの話と柔術との出会い、柔道家からみた柔術といった視点でお話を聞きました。
前編を読まれていない方は、こちらからお読みください。
後編はムンジアルに出場して感じたことやこれからのこと、読者からの質問について答えてもらいました。
お楽しみください!
世界大会・ムンジアルで感じたこと
(ブラジルブログさんから画像をお借りしました。)
taiki
旦那さんの影響で再び道着に袖を通すことになりますが、あまり試合志向ではなかったですよね?今回ムンジアルに出ようと思ったキッカケはなんだったのでしょうか。
夫がムンジアルに出ることになり、私もアメリカに行ってみたいなぁと思い、一緒に行くことにしました。
そうしたら、「行くなら出れば?」と夫に言われました。
行きたくても仕事で行けなかったりする人もたくさんいる中で、幸いに現地に行くことが出来るし、後からあのとき出ればよかったと後悔するのも嫌だったので、2週間前にエントリーしました。
そんな経緯でエントリーしたので、追い込んで練習していたわけじゃないし、減量もせずに、変なプレッシャーや緊張がない状態で試合に臨むことになりました。ただ、私も多少不安があったのでしょうか、メンタルトレーニングについてはネットでググりました。「落ち着く」とか「緊張しない」とかそういうのです。あまり役に立ちませんでしたが(笑)
むしろ、夫の方が緊張していたと思います。
奈々美さん
taiki
さすが、グーグル先生(笑)
実際に試合の方はどうでしたか?
試合会場がなんだか懐かしかったですね。
まったく緊張せずに落ち着いて出来ました。
初戦でスイープされて2点取られた際に、天井を見ながら「このままだと負けちゃうなぁ〜」と冷静に考えていました。夫のセコンドの声も聞こえましたし。そこから立て直して、得意のバックからのチョークで勝つことが出来ました。
逆に柔道時代は、試合で自分が何をしているのかわかりませんでした。
勝手に身体が動いていた感じでしょうか。
もちろん、勝手に身体が動くぐらい練習していたというのもあるのでしょうけど。
奈々美さん
taiki
変に力まずに、試合を楽しむことが出来たのですね。
そうですね。
どうしても勝つことだけを考えて柔術でも柔道でも試合をするとつまらなくなってしまうのです。今回は直前のエントリーで変に力まずに試合に挑めたこともありとっても楽しむことが出来ました。
今回は初戦から3戦目までバックからのチョークで勝ち上がってきたのですが、4戦目もバックからチョークが決まりそうになりました。
奈々美さん
4戦目のそのシーンです。
この時に冷静になって、「全部チョークだと面白くないなぁ」と考えていました。そうしたら、絞めが緩くなって逃げられてしまいました(笑)
どうせなら、コレをやったら面白いだろうなぁと思う技をやって、見ている人に「おおーー」って言ってもらいたいですね(笑)
奈々美さん
taiki
まさに明るく・楽しく・激しいエンタメ柔術!!
このインタビュー記事を読んだプロレス関係者が奈々美さんにアプローチしそうですww
練習風景:相手が茶帯でもなんのその
読者からの質問コーナー
taiki
実はこのインタビューをするにあたって、読者の皆様に、ツヨカワ女子の奈々美さんへの質問を募集した所、多くの質問が寄せられました。その中から、いくつかを選びましたので答えられる範囲で構いませんのでお応えください。
はい。私でよければお答えします。
奈々美さん
男性とのスパーリングはどうしているのか
男性とのスパーリングする際に、女性だからといって緩くやっている相手について「全力でかかって来い!」と思うのか、「私、女の子なんだから考えなさい」と思うのか、それ以外なのか、どのように思いますか?
逆に、男性で自分より力が強い相手が全力でガチスパーを仕掛けてくることに関してはどのように思いますか。
taiki
これは複数の男性から質問がありました。
自分よりも圧倒的に強い女性に対しては、男性からしたらどんな力加減で行けばいいのかわからないことがあります。
ぜひ、(強い)女性からはどのように見えるのか教えてください。私からもお願いします!
スパーリングしていて遠慮されてるなぁと感じると寂しいなぁと思います。
もちろん男性と女性なので力ではかなわない部分はあります。だからこそ力任せで押さえこまれるとこちらとしてもやっていて面白くないですよね。
力まかせの人やムキになっちゃう人は怪我してもよくないので、無理に抵抗せずにとらせるようにしています。
奈々美さん
taiki
ああ!!これは何人もの女性から話題にあがるモテないスパー!!
逆に上手な人は技術を使って来てくれるのでやっていてとても楽しいですよ。
奈々美さん
taiki
とてもわかり易いご回答をありがとうございました。
男性諸君!
格上女子には、持っているテクニックを駆使して全力で挑めということのようです!技の引き出し(決して力ではない)を全開放して挑みましょう!!
女性ならではの問題
女性が海外で試合をする上での事前に準備したほうがいいことや心がけておくことは何かありますでしょうか。
taiki
海外遠征ノウハウは三角絞め研究所の記事にもありますが、私の体験談ということもあり完全に男性目線になっていました。女性ならではのノウハウ的なモノは貴重な情報になると思いますので、ありましたらぜひお教えください。
う~~~ん、、、、何かありますかねぇ、、、、、
(しばらく考えて)ないですね。
今回はアメリカでしたけど、ヨーロッパはもっと不便で食事もひどかったり、会場も汚かったりと散々でしたからねぇ、、、
道着とIDとパスポートさえあればなんとかなるようになっちゃいました(笑)
私はあまりこだわりがないので特に問題ありませんが、こだわりが強い人は大変かもしれません。
アドバイス出来るとすれば、あまりこだわらずに、どんな環境でも適応することじゃないでしょうか。
奈々美さん
taiki
奈々美さんの話を聞いて、かつて青木真也選手が海外遠征についてまったく同じことを言っていたのを思い出しました。
青木選手の言葉を借りるのであれば、「枕とか飯とか気にし始めたら、アウェーが本当のアウェーになって負ける」とのことです。
フィジカルトレーニングはやるのか
純粋な柔術の練習の他に、フィジカルを鍛えるための筋力トレーニングは必要だと思いますか?
taiki
こちらも女性からの質問です。フィジカルトレーニングについてですが、奈々美さんは筋トレとかフィジカル系は何かやられていたのでしょうか?
私は筋トレが大嫌いでした。今はまったくしていません。
日本人はテクニック先行で外人相手には力負けするということをよく聞きますが、今回のムンジアルで力負けはまったくしなかったです。フィジカルはある程度あれば大丈夫なのではないでしょうか。
ただ、怪我をしてしまったこともあったので、ストレッチはやるようにしています。
奈々美さん
taiki
読者の方が誤解されないように補足させて頂きます。
私は何度も一緒に練習させて頂いているのでわかるのですが、奈々美さんはかなり強いフィジカルを持っています。主に柔道時代に培われたものかもしれませんが、決して言葉通りに受け止めないほうがいいと思います。
技の選び方
自分に向いている技、向いていない技をどのように見分けてきたのでしょうか?
taiki
私は幸いにも三角絞めとか糸通しとか身体の特徴を活かした技を見つけたのですが、奈々美さんはどんなことを考えて技を選んでいるのでしょうか?
私は技の得意・不得意はあまり考えていません。技に関してはなんでもやってみたいと思っています。
ただ、女子選手の場合は関節が柔らかくて関節技を極めるのが大変だったりすることがあります。私が絞め技をよく使うのは関節技よりも極めるのが楽というのはありますね。
あとは楽しくて、かっこいい技です。
見ている人が「おお〜〜!!」って湧く技を使って魅せる柔術をやりたいので、そういう基準で技を選ぼうと思っています(笑)
奈々美さん
今後の目標
taiki
では、最後に今後のことについて教えてください。
今回はいろんな偶然が重なって試合に出た形になりましたが、今後も試合はチャレンジするのでしょうか??
特に試合に向けて的な意気込みはないです。柔道時代は表向きは「絶対に勝ちます!」と言ってましたけど(笑)
出るとしたら海外の選手とも対戦できそうなアジア選手権あたりでしょうか。
奈々美さん
taiki
おお!
奈々美さんの試合が見たいですし、柔術を続けてくれることが嬉しいですね。
今は柔術をやって新しい技を覚えたり、柔術を通じていろんな人と繋がれるのがとっても楽しいです。
試合で勝つとかもっと上の帯を目指すとかそういうのは考えずに、とにかく楽しく続けていければいいなぁと思います。
ずっと青帯でいい(笑)
奈々美さん
taiki
この強さでずっと青帯だったら堪らんなぁ〜
taiki
勝利に徹するストイックなアスリートとは真逆の考え方ですね(笑)
この力の抜けた感じが奈々美さんの強さの秘密な気がしてきました。
ぜひ、練習を通じて強さだけでなく、見る人を魅了するエンタメ柔術の道を追求してください!!
本日はありがとうございました!!
まとめ:柔術はなんだって優しく包み込んでくれる!
いかがでしたでしょうか??
柔道で活躍してきた選手が実は柔道を辞めたかったというまさかの過去でしたね。
その一方で柔術特有の自由な雰囲気に触れて、再び「柔」の世界に戻り、日々の練習や試合をとても楽しんでいることが伝わってきました。
今回のインタビューを通じて、「白帯から黒帯」や「ガチ柔術からフィットネス柔術」といったレベルや志向の違いを同時に優しく包み込む柔術の懐の深さを感じました。
我々柔術家が一番柔術を誇るべきポイントは三角絞めやベリンボロといったテクニックではなく、その自由でなんでも包み込むような思想や文化なのでしょう!
以上「柔術ツヨカワ女子に聞いてみた!柔術青帯世界3位 市川奈々美選手」でした。
研究所からは以上です。
オマケ:三角絞め研究所vsツヨカワ女子
私はガチでやっていますが、ボコボコにされています。
追記:記事を読んでくれた皆様の反応
柔道経験者の方は、柔道の厳しさに共感していらっしゃいます。皆さん、大変だったみたいですねぇぇ。
市川選手とは、レベルは違うけど、私も高校時代は部活(柔道部)の練習が、嫌で嫌で。。。
「嫌なら辞めればいいやん」と言われるけど、監督に辞めると言いに行くほうが、シゴキよりもよっぽど怖いわ!
柔道は、修行です https://t.co/AUyZlayC9c— Masa Takahashi (@takamasamy) 2018年6月20日
私も小中高と柔道をしましたが、楽しかった記憶はあまり無く、練習後の休憩だけが楽しみだった気がします。
掛かり稽古と強制的なストレッチが地獄のようでした。— 脇汁 野郎 (@wakijirunameo) 2018年6月22日
私の学校は笑って殴られる事はありませんでしたが、学校の部活で絞られた後に警察署の道場に行き練習するのが心底イヤでした。
今は畳の上を楽しんでいるのがあの頃からは考えられません。— 脇汁 野郎 (@wakijirunameo) 2018年6月22日
俺は柔道は嫌いじゃないしむしろ好きだけど束縛は嫌い。
めっちゃいいインタビューだなぁ
この記事で柔道から転向する人多くなるんじゃないかな— K.Junya (@judokobajun) December 20, 2019
市川選手の直接のお知り合いも当時を振り返っておられます。
小学生の頃の内股のキレは、大人顔負けだったなあ。 https://t.co/5VTXyMdZlv
— 宮下(BJJ黒帯、MMAインストラクタ) (@sodetsusiman) 2018年6月22日
これはおっしゃる通り!!格闘技関係者だけでなくアスリートの方には読んでほしいです。
これは全格闘技系女子必見の内容ですな。
格闘技に関わらずエクササイズに興味のある女性にも読んで欲しい記事! https://t.co/MlWjUTMWgA
— Koutarou (@koutarou_009) 2018年6月20日
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