「思考の瞬発力」が強さに直結すると思った話

こんにちは、taikiです。

試合やスパーリングの後に、「あの時、こいうすればよかったのでは?」と言われて「その発想はなかった」とか「言われればわかるけど、その場で急には、、、」みたいなことってありませんか?

状況を理解して、できることを考えて、判断して、行動に移すというプロセスが瞬時に行われます。

「思考の瞬発力」とでも呼びましょう。

この「思考の瞬発力」は柔術の強さに直結する要素でもあります。

今回は、柔術における「思考の瞬発力」について掘り下げて考えてみましょう。

スパーリング中のアドバイスの話

色帯の方々は、練習中にスパーリングを見ながらセコンド的にアドバイスをすることがあることでしょう。

先日、私もスパーリングを見ながらアドバイスをすることがありました。

その際に、クローズドガードからの十字絞めとそのディフェンスで膠着する場面があったのです。

私は十字絞めをディフェンスしている腕がとれると思ったので、「腕取れますよ」とアドバイスをしました。そうしたら十字絞めをやめて腕に切り替えて一本取れました。

スパーリングが終わった後に、こんなやり取りをしました。

紫帯くん
紫帯くん
あの時、腕を取るという発想はなかったのですか?
まったくなかったです。三角絞めに変えるのはありかなぁとは少し思いました。
青帯くん
青帯くん

私からは「腕をとる」という選択肢は見えていたのに、その方からは「腕をとる」という選択肢は見えていませんでした。

ただ、言われれば気づくし、実行もできる。

その場に応じた最適解を並べて選ぶという行為、即ち「思考の瞬発力」は強さに直結するなぁと実感しました。

「思考の瞬発力」とはなんなのか

プロセスから考える「思考の瞬発力」

仕事でも日常でも、他愛のない会話の中で、「この人、頭の回転速いなぁ」と感じる切り返しや対応に遭遇したことはありませんか?

また、プロのお笑い芸人がトークで見せる絶妙な切り返しをとっさにするのを見ると頭の回転が速いなぁと思いますよね?

これらは「思考の瞬発力」が高いと言えるでしょう。

「思考の瞬発力」をもう少しわかりやすくするために、プロセスに分解してみましょう。

  1. 状況を理解する
  2. 選択肢を並べる
  3. 選択肢の中から一つ選ぶ
  4. 行動する

前述の「十字絞めの膠着」状態においては、「選択肢を並べる」の部分では、「十字絞め継続」と「三角絞めに移行」は並んでいましたが、「腕十字」は並んでいませんでした。

「選べなかった」わけではなく、「並べられなかった」です。

まずは、選択肢を(瞬時に)出すこと、次にその中からベストを(瞬時に)選ぶこと。これこそが、「思考の瞬発力」の本質なのでしょう。

「思考の瞬発力」の具体例

柔術から少し離れてしまいますが、「思考の瞬発力」の事例を紹介しておきましょう。

『進撃の巨人』の有名なシーンです。
兵士のハンネスは、子供であるエレンとミカサが目の前にいて、エレンの母が巨人に捉えられているという場面に遭遇します。

ここで、「巨人を倒して3人救う」「エレンの母を見殺しにして、確実にエレンとミカサを守る」の2つを選択肢として並べました。

進撃の巨人』1巻より(C)諫山創/講談社

そして、後者である「エレンの母を見殺しにして、確実にエレンとミカサを守る」を瞬時に選択しました。

進撃の巨人』1巻より(C)諫山創/講談社

とっさに状況を判断して、選択肢を並べて、決断するという「思考の瞬発力」が描かれていますね。

柔術も言ってしまえば、コレの連続なわけです。

思考の瞬発力を高めるにはどうすればいいか

「思考の瞬発力」の正体がわかってくるとどうやって「思考の瞬発力」を鍛えるかを知りたくなってきますよね。

プロセス通り分けて考えてみましょう。

Ph1:状況を理解する

選択肢を考える前に、まずは置かれた状況を正しく理解しないことには始まりません。

前回の記事で取り上げたバックポジションを例にしてみましょう。前回の記事ではバックは主に4つあると紹介しました。

体系化して効率的に学ぶバックエスケイプ
こんにちは、taikiです。 先日、限定スパーリングに関する記事を書きました。 その中で、「バックを取られてから逃げる練習」よりも「バックを取られない練習」をした方が効率が良いのではという話をしましたが、今回はまさに「バ...
  • オーバーアンダーのオーバーサイド
  • オーバーアンダーのアンダーサイド
  • ダブルアンダー
  • シングルバック

最初はなんとなくバックでも構いませんが、精度をあげていくには「オーバーアンダーのオーバー側にいる」「今はダブルアンダーにいるので絞め技はないな」といった感じで解像度を高めて状況を理解しましょう。

どんなに「思考の瞬発力」を磨いてもスタート地点の認識が間違っていたり、大雑把すぎては後の工程でエラーがどんどん大きくなってしまいます。

Ph2:選択肢を並べる

「思考の瞬発力」に優れた人は、その瞬間にゼロベースから考えているわけではありません。

脳内にある程度パターンを持っています。

そのパターンをいかに素早く引き出してくるかでしょう。

パターンを増やすには、いかに過去にそれに触れているかが重要になってきますし、それを素早く引き出すのは、いかに情報が整理されているかです。

これに関しては一朝一夕で身につくものではありません。

普段からクラスで習う「XXからの展開」といった技を覚えて、整理された情報として積み上げていくしかないでしょう。

と言いつつも、私もまだまだ訓練中ですので一緒に頑張りましょう。

この本にヒントがあるかもしれませんのでよかったらどうぞ。

Ph3:選択肢の中から一つ選ぶ


選択肢を出せるようになったら、その中からベストなものを選ぶ工程です。

この工程に関しては、相手がいることですし、再度検証することもできない場合が多いので「迷わない」が答えな気がしています。

時間を掛ければ良い答えにたどり着くとは限りませんし、実際のスパーリングにおいては待ってくれません。

だったら「スピード重視で迷わずに間違っててもいいから決める」ではないでしょうか。

「1秒でも早く決断して、その決断を自分で正解に導く」、、、これが正解な気がします。

Ph4:行動する

これはシンプルに何度もその技を試すしかありません。

打ち込みするなり、スパーリングで試すなりして、技の原理を理解して身体で覚えましょう。

反復練習あるのみです。

身体を使う競技である以上、頭でっかちなだけでは強くなれません。

まとめ:思考の瞬発力は強さにつながる

「思考の瞬発力」を感じるモノの一つにラップバトルがあります。

即興で韻を踏みながらラップで戦う↓こういうのです。

ラッパーのR指定が何かのインタビューで「その場で思いついているわけじゃなくって、脳内にネタのストックが大量にあって、いかに素速く引き出しをあけるかの勝負をしている」的なことを言っていました。

これこそが「思考の瞬発力」の正体でしょう。

柔術において、「仕掛けの速さ」や「対応の速さ」、すなわち「思考の瞬発力」は強さに直結するものと考えています。

フィジカルと同時に思考力も鍛えてこその強さというのが、柔術が知的スポーツとよばれる所以かもしれませんね。

以上「思考の瞬発力が強さに直結すると思った話」でした。

合わせて読んでほしい

芝本選手がインタビューの中で、「技の整理」について語ってくれています。

「思考の瞬発力」に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

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