こんにちは、taikiです。
先日、限定スパーリングに関する記事を書きました。
その中で、「バックを取られてから逃げる練習」よりも「バックを取られない練習」をした方が効率が良いのではという話をしましたが、今回はまさに「バックを取られた後の練習」を取り上げようと思います。
バックを取られた状態というのは、柔術的にはかなり劣勢で半分ぐらい勝敗がついちゃったようなポジションです。
その劣勢なポジションから逃げる練習って楽しいですか??
私はバックエスケイプの練習をするならデラヒーバの攻防をやったほうが楽しい。圧倒的に楽しいです。
必要だと頭でわかっていてもつい後回しにしがちな「バックエスケイプ」の練習を効率よくやるにはどうしたらいいのかについて考えたいと思います。
やりたい練習を増やすために、必要な練習は効率重視で習得したい方はぜひ参考にしていただければと思います。
最終的なポジションだからこそ、効率的に学んだ方が良い
最初に4つの質問にYes/Noで答えてみて下さい。
- バックを取られないのが一番だ
- バックエスケイプは出来たほうがいい
- バックエスケイプは知っていたほうがバックアタックもしやすくなる
- バックエスケイプはテクニックとして学ぶのはやっぱり退屈だ
4つの質問でYESが2つ以上あった方はこの記事を読みましょう。4つだった方、私と仲良くなれそうです(笑)
知っていたほうがいいけど、後回しにしがちなバックエスケイプこそ、最小限の労力で効率よく覚えちゃう方がいいですよね?
最小限の労力で効率よくできるようにするためには、「頭で理解する」ことと「身体で訓練する」ことの2つが必要です。
Youtubeで見た技を道場でやってみようとしても再現できないように「頭で理解する」だけでは身体はついてきません。逆に、頭で理解していない技を動作だけなぞって再現しても、単なるモノマネになってしまい、技のコンセプトや本質にはたどり着けないでしょう。
「頭で理解する」「身体で訓練する」を両立させてこそ、効率があがるというものです。そこで、「頭で理解する」部分に関しては情報をうまく取りまとめて、覚えやすい形に変えてしまえば効率があがると考えました。
バックポジションを体系化する
断片的な知識は役に立たない
突然ですが、『キングダム』読んでますか?
学校の歴史の授業で「秦の始皇帝が中国を統一した」と習っても頭に入ってきませんが、『キングダム』を読むと始皇帝が若い頃に派閥争いや五国合従軍といった大ピンチを何度も乗り越えて中華統一を果たした様子が頭と心に刻まれます。
↑中国を統一した秦の始皇帝も何度もピンチに陥ります
人間は無味乾燥で無機質な情報を覚えるのには限界があります。
柔術のテクニックにも同じことが言えるのではないでしょうか。
テクニック単体を習うよりも、その前後状況との因果関係やそのポジションにおける全体像が一緒にあると理解しやすくなります。
そもそも私は、試合でバックを取られるとそのままチョークで絞められて負けることが多かったです。
これはバックアタックとディフェンスをまったく理解していなかったことに由来していると考えました。
道場のクラスで習ったはずなのに、実践になると全然出来ない。出来ないというよりも整理されていないから引き出せない。
だからこそ、まとめてみようと思いました。
まずはバックにおける全体像を整理する
私が所属している道場ではカリキュラムがあります。
「ベーシック」「アドバンスド」「マスター」の三段階のカリキュラムがあって、各々30ポジション×5テクニック×3コースの450テクニックがあります。
これを何年も習ってきたのだからこれを元に整理した方がいいはず。
ベーシックが白〜青帯、アドバンスドが青〜紫帯、マスターが紫帯以上といったなんとなくの目安がありますが、今回はこれをレベルではなく、ポジションという切り口で横に切ってみます。
この450テクニックの中に、バックコントロール、バックエスケイプの項目が5×2×3=30ある
これをひとまとめにしちゃうとバックポジションでのアタックとディフェンスが体系として整理されて全体像が見えるんじゃないかと考えました。
その結果をまとめたのがこちら。
まずはポジションとしては大きくは3つ+1つあると考えます。
- オーバーアンダーのオーバーサイド
- オーバーアンダーのアンダーサイド
- ダブルアンダー
- シングルバック
シングルバックは別枠として今回の議論からは外しておきましょう。
「オーバーアンダーのオーバー側」「オーバーアンダーのアンダー側」「ダブルアンダー」の3つを起点に考えると整理しやすくなります。
次にそこからのアタックを見ていきましょう。
アタックの種類を網羅しようとしたらキリがありません。ここは代表的な技にしぼります。具体的には下記5つ。
- Rear Naked Choke(RNC)
- Collar Choke
- Bow and Arrow Choke(BAC)
- Arm bar
- Rear Triangle
パックにおけるポジションの種類とそこから来るであろうアタックの全体像が少しずつ見えてきました。
あとは、ポジションとアタックをつないでみるとバックポジションの大きな流れを掴むことが出来ます。
オーバーアンダーのオーバー側(絞め手側)では、主にRNCとカラーチョークからの展開が待ち構えています。
一方で、オーバーアンダーのアンダー側からは、RNCはなくて、カラーチョークや腕十字、後三角絞めといった展開が待ち構えています。
逆にダブルアンダーからは直接の絞め技がありません。
バックポジションとそこから展開されるであろうアタックの関係がわかったら、スッキリしませんか?
こうなってくると後は優先順位の問題になってきます。
優先順位をつける
バックポジションの全体像が見えたら、キーになるポジションを見定めて優先順位をつけましょう。
まずは3つのポジションを理解する
当然、具体的な絞め技から守るよりも、それ以前のポジションの段階でディフェンスができるに越したことはありません。
そうなると絞めに行く前の3つのポジションでの攻防の優先順位が高くなります。
バックアタックを整理している。
・オーバーアンダーのアンダー側
・オーバーアンダーのオーバー側
・ダブルアンダー
まずは、この3つのどれに今、自分がいるかを認識しないことには何も出来ないという基本的なことがはじめてわかった(≒俺は何もわかってなかった)— 三角絞め研究所 (@triangle_chk) October 23, 2021
バックを取られたら、この3つの中のどれにいるかを判断する。
ここを正しく認識しないことには、いつまでたってもバックエスケイプはできるようになりません。
ポジションからの逃げ方を学ぶ
各ポジションにはそれぞれの逃げ方があります。
応用範囲の広いバックスライドやアームループ系のエスケイプ技を最初にできるようになると効率的ですね。
ここまで整理出来てくると、頭にだいぶ入りやすくなっているはず!
絞めの形を作られてからの逃げ方を学ぶ
次に、絞め技のディフェンスです。
もう既におわかりかもしれませんが、オーバーアンダーのどちら側からでもできちゃうカラーチョークの対応を最初にやるべきでしょう。
逆に言えば、アタックはどちらのサイドでも占めることができるカラーチョークから練習すると効率がいいです。
このあたりまで来たら、バックポジションに関する理解はかなり進んでいるはずなので、あとはどこからやっても大丈夫でしょう。
まとめ:全体像と優先順位がわかれば効率よく技を覚えられる
バックポジションからのエスケイプ技をまとめてみました。
柔術的に言えば、バックは最終形態です。
そこからのエスケイプがどんなに得意でも試合では勝てないかもしれません。
しかし、何も知らないわけにもいかないし、そればっかりやっているわけにもいかないのであれば最短で学ぶ努力はしてもいいでしょう。
思考停止状態で、なんとなくクラスで学ぶエスケイプ技をなぞっていても実践的なテクニックは身につきません。
頭で理解して、身体で学んでこそ効率よく出来ます。
ぜひ、必要だけどあまり面白くない(かもしれない)テクニックだからこそ、効率重視で要領よく学びましょう。
以上「体系化して効率的に学ぶバックポジション」でした。
追記:
本記事のアップデート版もあります。こっちのほうが無駄を削ぎ落としてわかりやすくまとまっています。きっとこっちのほうが役に立つはず。
オマケ
今回紹介したトライフォースのカリキュラムのベーシックは、こちらの教則本で学べます。
↑の続編とも言えるアドバンスやマスターカリキュラムはオンラインで学べます。