こんにちは、taikiです。
前回の更新からだいぶ空いてしまいましたが、私は元気に生きております。
コロナの影響で柔術が自粛ムードになるとSNSやブログも積極的に発信しにくくなってしまったこともあり更新が止まってしまいました。
先行きの不透明感は拭えませんが、手洗いうがい必須・換気・消毒という厳戒態勢の中で練習も出来ている(と思ったらまた出来なくなってしまった)のでブログも再開しようと思います。
今回は、少し前に話題になっていた「柔術の基礎が大事」ということについて取り上げて、なんで大事なのか、ネット検索全盛のこの時代にどうやって基礎と応用を結びつけて考えればいいのかについて考えてみたいと思います。
基礎(ベーシック)が大事の基礎とは何なのか
この手の議論をする際に、必ずしなくてはいけないのは言葉の定義を明確にすることでしょう。
同じ言葉でも人によって意味合いが異なるとフワッとした議論になり、生産的な議論がなされません。
SNS上での空虚な議論の正体は「言葉の定義のユルさ」です。
だったら、柔術の基礎とは何かを最初に定義しちゃいましょう。
ズバリ、コレです。
本の冒頭でも早川先生はこんなことを仰っています。
これまでに私が学び、指導してきたブラジリアン柔術のテクニックを、長い年月を掛けて整理しました。
そして、それらのテクニックのうち、全くの初心者がある程度のレベルに達するために学ぶべきものとして、150個のテクニックを厳選しました。
出所:ブラジリアン柔術教則本 はしがきより抜粋
柔術の基礎をこの本に書かれている150の技と定義して話を進めて行きたいと思います。
ここから先はこの本を読んだ人だけ読み進めてください。
冗談です(笑)
アカデミーの枠を超えて多くの人に読まれているこの本を私なりの解釈で読み解いて、「柔術の基礎とは何か」に迫りたいと思います。
「ブラジリアン柔術教則本」を読み解く
毎度のことながら、まずは頭に入りやすいチャンクにしてから関連付けをして、全体像を捉えてから背景にあるコンセプトを掴むことからはじめます。
chunk チャンク
〔パンや肉などの〕大きい塊、ぶつ切り、厚切り
〔音声や画像ファイルなどの〕ひとまとまりのデータ。
↑本の目次
目次を読み解いて構造化する
「ブラジリアン柔術教則本」は30のチャプターと各チャプターごとに5つのテクニック、合計150テクニックが収録されています。
この2点に注目してみました。
- チャプターがポジションごとに別れている
- チャプターがアタック系とディフェンス系に分かれている
既にチャプターごとにタイトルがついていて、半分チャンク化されています。
構造化しやすくするために、ポジションを私なりに置き換えてこんな感じで構造化しました。
各チャプターにポジション名とアタック系なのかディフェンス系なのかを分類します。
こんな構成になります。
- アタック系
- クローズドガード
- スタンド
- サイド
- マウント
- バック
- ニーオン
- デラヒーバ
- ハーフガード
- パスガード
- ハーフガードボトム
- シッティングガード
- スパイダーガード
- タートル
- ディフェンス系
- サイド
- タートル
- マウント
- パスガード
- バック
- サブミッション
- クローズドガード
- スパイダーガード
少し構造化してきましたが、まだわかりにくいので、更に図解してみましょう。
図解して示唆を抽出:アタック編
まずはアタックについて考えてみましょう。
収録されているポジションごとに右へ行けば行くほど有利なポジションとして図解してみるとこんな感じになります。
サブミッションはあるとは言え、収録されているテクニック動画の背景にある大きな流れは↓こんなでしょう。
- ガードの攻防でスイープ/パスガードを狙う
- パスガードをしてサイドをとったらマウント・バックを狙う
- マウント・バックをとったらフィニッシュを狙う
矢印をつけて流れを示すとこんな感じ。
更に収録されているテクニックの数を追記してみます。
100あるテクニックの内、55がガードの攻防におけるテクニックでした。
以上を踏まえると柔術の基礎とはこんな解釈が出来るのではないでしょうか。
- スイープ、パスガード、マウントとポイントを重ねて有利なポジションをとること
- ガードの攻防が柔術の半分ぐらいを占める基礎
これってそんなに違和感ないですよね。
図解して示唆を抽出:ディフェンス編
ディフェンスも同様に見てみましょう。
同じ様にチャンクごとに配置するとこうなります。
ディフェンスのコンセプトは右から左、少しでも不利なポジションからガードの攻防に戻しましょうということでしょう。
収録されているテクニックの数をみるとサイドが多い。
要はサイドポジションまでで食い止めることがいかに大切かということではないでしょうか。
サイドポジション死守は、ジオン軍vs地球連邦軍で言えばソロモン攻略、第二次世界大戦で言えばミッドウェー海戦みたいなものですね。ここをやられると一気に不利になるみたいな。
そんなポジションだからこそテクニックも手厚い。。。。かも。
ディフェンス面における柔術の基礎とは、少しでも不利なポジションからガードの攻防に戻す技術と言えるのではないでしょうか。
「極め」の視点からも見てみよう
視点を変えて、チョークやサブミッションといった「極め」の観点からも見てみましょう。
アタックテクニック100の内、極めは37ありました。
それをポジションごとに表示するとこんな感じです。
パスガード以降の優位なポジションをとってから極め技が半分以上です。
つまり、優位なポジションを取り進めていく過程で、チャンスがあればサブミッションを取るということでしょうか。
山中ケンヤ選手がまさにこのようなことを仰っていました。
僕はポイントを重ねる中で決めれたら決めるスタイルです。#peing #質問箱 https://t.co/rW998SteTH
— ケンヤ (@knkn44_bjj) September 3, 2018
これこそが山中ケンヤ選手の強さの秘密だったりするのではないでしょうか。
柔術の基礎とは何なのか
以上を踏まえると柔術の基礎を抽象化するとこんな風に言えるのではないか。
- 柔術の基礎の半分はパスガードとスイープの攻防
- スイープ、パス、マウント、バックとポイントを重ねていくこと
- ポイントを重ねていく過程で極めは狙えたら狙う
- ディフェンスはポイントを与えない、与えてしまったら元に戻すこと
なんとなく柔術の基礎の骨格が見えてきました。
参考:柔術の応用ってなんだ!?
話は脱線してしまいますが、今回の基礎(ベーシック)とは真逆の概念についても考えてみましょう。
ベリンボロでバックを取りに行く柔術は基本的な思想が大きく異なります。
いわゆるモダン柔術ってやつですね。(ちなみに私はモダンという言葉をいつまでも使い続けることには違和感がある)
金古先生がモダン柔術について語っている動画で「いきなり4点を狙いに行って、その結果、2点や3点が取れるというコンセプト」と語っていますが、私も三木選手と同様にとてもしっくり来ました。
腑に落ちた。
革新的なゲームのコンセプトについた名前がモダン柔術ってことか。
つまりモダンだからどうこうっていうよりメンデス兄弟の偉業につけられた名前がたまたまモダン柔術だったって考えるのが僕にはしっくりくる。モダン柔術って何? https://t.co/CNPompFP55 @YouTubeより
— 三木翔太 (@shotacdbjj) March 21, 2020
まさに、「スイープして、パスガードしてポイントを積上げて有利なポジションを取ること」とは一線を画するコンセプトですよね。
図解するとこんな感じじゃないのかな。
確かにコンセプトが違いますね。
この論理で行くと極めにこだわる柔術も基礎ではないのでしょうし、三角絞めをゴールに見据えるという考えも基礎からは外れるのかもしれません。
なんとなく自分の柔術がわかった。
基礎が大事な理由も知りたい
「何事も基礎が大事。しっかり学べ!」と言われても素直に従える人ばかりではありませんよね。
↑なんで大事かを言ってくれないと納得出来ないのは私だけ?
人には固有のやりたい技があるし、いきなりベリンボロからやってみて、試行錯誤した結果、基礎に戻る過程を楽しむ人もいるでしょう。
「大事なんだから黙ってやれ」と言われてついていけるドMな方や思考停止な方ばかりではありませんので、基礎が大事な理由をもう少し掘り下げてみましょう。
難しい技がわかるようになる
ノーギ世界王者の澤田選手が「ブラジリアン柔術教則本」に関して、こちらでこのようなコメントをしております。
トライフォースのベーシックのおかげで、たとえば他の人の最新の技も読み解く事が容易である。
基礎の技がわかっていると見たことのない新技が出てきた際に、複雑な技を分解して「要はアレとアレとアレの組み合わせだね」と咀嚼できるということでしょう。
自分の知っていることに置き換えることが出来れば、物事の理解は早まり、深まります。
基礎への理解が深ければ深いほど、思考も高速になり、初見でも対応出来るようになるのでしょう。
基礎の技を組み合わせて難しい技を生み出せるようになる
基礎が充実すると最新の技を読み解くこととは逆方向にも作用するでしょう。
例えば、基礎的なムーブを3〜4つ組み合わせればもはや基礎ではなく応用の領域に入っていきます。
世の中には、全く見たことのない技もありますが、新しい技の大半は既存にある技の組み合わせで成り立っているはずです。
基礎を重ねることによって、他の人があまり使っていないような技に進化することもあるでしょう。
あの技ってどうやっているんですか?
ああ、アレね。XXとYYとZZを組み合わせただけで、そんなに特別なことはやってないんですよ
!?
確かに言われてみればそうだ!
みたいなやり取りが行われることは容易に想像できます。
柔術IQがあがる
「基礎がしっかりしていると技の分析と再構築がスムーズに出来るようになる」
このことをカッコよく言うと
「柔術IQが高くなる」ってことでしょうか。(柔術IQって言いたかっただけw)
柔術IQが高ければYoutubeのド派手な技だって自分なりの判断基準で使える・使えないを精査して、効率的に吸収出来るでしょう。
(ちなみに私の柔術IQが高いなんて1ミリも言ってないので誤解しないでくださいね。)
柔術IQが高くなると副次効果的に、頭の使い方も上手になり、普通に頭がよくなると思われます。
運動はそもそも頭にいいですし、柔術的な頭の使い方を日常生活に応用させたら、役に立つ場面はいくらでもあるでしょう。
人間の体で唯一使い倒しても壊れないのは頭(むしろ使えば使うほどよくなる)であって、膝や肘みたいにすり減ってしまうこともありません。
基礎をおろそかにせずに積上げた先には、高い柔術IQがあるのかもしれませんね。
まとめ:基礎と応用は常に行ったり来たりの関係
何事も基礎が大事とはいいますが、そればっかりやっていて飽きちゃってもしょうがないですし、遠回りしてでも自由に練習したいという方も多いと思います。
趣味の柔術ぐらい自由に楽しみながら練習すればいいと思いますが、その際に、基礎的な要素はなんだろうというのを常に意識して、応用と基礎を常に行き来してみたらどうでしょうか。
また、基礎が大事の真意は、「柔術IQを高める為にも基礎をやろうね」なのでしょう。
常に基礎と応用を行き来して、技の分解と再構築の両方が自由に出来るぐらい頭を柔らかくして柔術を楽しみましょう。
以上「【基礎が大事?】柔術IQを高めるためベーシックテクニックを学ぼう」でした。
あわせて読んでほしい
初心者から上級者まで万人におすすめ出来る柔術の教則本です。
そんな早川先生が柔術の戦略とか戦術といった考え方に関する書籍を出すそうです。これは楽しみですね。