こんにちは、taikiです。
突然ですが「相手の立場になって考えろ」と言われたことないですか?
「相手の立場になると確かにそれは無理だ」とか「その発言自体が相手の立場になって考えてない」とかいろんな議論のパターンがありますが、今回は柔術的に相手の立場になって考えることについて取り上げたいと思います。
聞かれた技を解説する際に視点は2つある
道場で練習をしていて、先生や練習仲間に疑問に思ったことを聞いたり、聞かれたりすることってありますよね。
私の場合は「糸通し」について聞かれることがよくあります。
その際に「相手の立場になって考える」を使って説明するとわかりやすいと感じる方が多いようです。
技の説明においては登場人物は2人。
- 技をかける人
- 技をかけられる人
それぞれの視点でどんな解説が出来るか考えてみましょう。
本題に入る前に糸通しってこんな技
そもそも糸通しってコレです。
この技をかける人とかけられる人の立場で解説してみましょう。
技をかける人の立場で考える
技をかける人はこんな感じで手順を説明するのでしょう。
- クローズドガードから足をオープンして、相手の二の腕を蹴ります。袖を持たないスパイダーガードのイメージです。
- そうすると相手の身体が半身になります。
- そこから自分の反対側の足で背後から脇を通し、通した足首で上腕部分をひっかけます。
- ひっかかった腕の手首を自分の手で掴みます。
単純に起きていることを順を追っている印象ですね。
技をかけられる人の立場で考える
一方で、技をかけられる人の立場で考えてみます。
その前に、背骨の動きについて知識を補っておきましょう。
今回は背骨でも「頚椎(ケイツイ)」「胸椎(キョウツイ)」「腰椎(ヨウツイ)」とある中でも胸のあたりの部分の胸椎(キョウツイ)です。
背骨は場所によって回旋出来る角度が違っています。胸椎は30度ぐらい回旋出来ます。
これを踏まえて起こったことを言語化するとこんな感じでしょうか。
- 二の腕を蹴られて、背骨の胸の部分(胸椎)が回旋する
- 胸の部分が30度ぐらい回旋すると強制的にストレッチが効いて身体が動かしづらくなる
- その隙きに背後から反対の足が伸びてきて脇を通されて、回旋した胸の部分が戻らなくなる
技をかけられる方(≒身体)からするとこんな風に見えるのでしょう。
図解するとこんな感じ。
2つの立場を統合して解説してみる
2つの立場から見たことを統合してみるとこんな感じでしょうか。
- 二の腕を蹴って強制的に胸椎の回旋のストレッチ状態を作る
- 胸椎を回旋させると相手の脇が足を通しやすい位置に出て来る
つまり「足のリーチで強引に頑張る技ではなく、相手の身体をネジることによって自分の足を通しやすい場所に相手の脇を持ってくる技」と説明出来るのではないでしょうか。
道場で練習仲間に糸通しについて聞かれた際に、「胸椎を強引に回旋させてストレッチ状態を作る」「足を通しに行くのではなくて、通せる場所に針の穴(脇)を持ってくる」と技をかけられる側の視点と身体の構造を交えて解説すると納得してもらえることが多かったです。
複数視点は記憶の定着の視点からもGood
また、違った立場で考えることは記憶の定着においても効果があります。複数メソッドですね。
以前もこちらの記事で紹介させて頂きました。
応用編:違うポジションでも胸椎の回旋がポイント
1つの現象を2つの違う立場から考えてみた結果、技のコンセプトのようなものが見えてきました。
技をかけられる側の立場になって「胸椎の回旋」がポイントなのかとわかってくると違うポジションからも同じ技が狙えるようになります。
それがこちら。32秒あたりから。
クローズドガードからではなく、片襟片袖からの糸通しです。
スタート地点が違っていても本質である胸椎の回旋は共通しているので可能になります。
柔術以外でも役に立つ?複数視点の事例
物事をいくつかの視点でみると見える景色が違ってくることを柔術を通じてお話してきましたが、柔術以外ではどう使えるのかについても紹介しておきましょう。
わかりやすい事例として、漫画や小説があります。
複数視点で成功した作品をいくつか紹介しましょう。
機動戦士ガンダム
複数視点の古典と言えば、ガンダムでしょう。
ジオン軍と地球連邦軍の両方の視点で描かれるからこそ、両方に感情移入できてしまう作品です。
ジオン軍にはジオン軍の事情があるんですね。
鬼滅の刃
最近の作品で言えば、鬼滅の刃でしょう。
人間と鬼と両方の視点で描くために、物語が立体的に見えてきます。
鬼には鬼になってしまった事情があるし、鬼なりの正義があるわけです。
こちらでも紹介しています。
ワンピース
逆に、片方の視点が強調されている作品の代表格と言えばワンピースじゃないでしょうか。
ワンピースは知らない領地に乗り込んで「この国の政治が気に入らん」といって自分たちの正義を押し付けるという一方向の視点になりがちです。
統治している人達の正義はあまり描かれずにルフィサイドの視点になりがちですね。(だからつまらないとは言ってません)
まとめ:複数の視点で考えると世界が違って見える
「相手の立場になって考えろ」とは誰もが一度は言われたことがある言葉でしょう。
実際に相手の立場になって考えても、それが正しいかどうかは相手に聞いてみないとわかりません。
大切なのは間違ってもいいから、いろんな視点で物事を考えてみて、本質はどこにあるのかを自分なりに掴もうとすることじゃないでしょうか。
道場の先生方も技のかける側の視点と技の受け手側の視点とを織り交ぜて、テクニックの説明をしていると思います。
普段のクラスにおいても習う側がこの視点を持って聞いていると説明が違って聞こえて、頭に入りやすくなるので、ぜひ意識してみてください。
以上「『相手の立場になって考える』と柔術の見える景色が少し変わる話」でした。