こんにちは、taikiです。
昨年末に紫帯を頂きました。
青帯になったのが2015年8月でしたので紫帯になるのに3年4ヶ月かかりました。これが早いのか遅いのかはどうでもいいのですが、確かに青帯になった頃よりは強くなった実感はあります。
せっかくの柔術的節目ですので、これまでのことを振り返ってどんなことを考えて柔術をやっていたのかを整理しました。
その中の1つがこちら。
柔術は技が多すぎて、最初は何をやればいいかわからなかったけど、三角絞めにもっていって極めることだけに絞ったらやることが整理されて、研鑽されて試合でも勝てるようになった。
という話をわかりやすく整理した記事って読みたい人いるかな。図解するのが手間だから書くかどうか迷っている。— 三角絞め研究所 (@triangle_chk) 2019年1月16日
このツイートが想定以上の反響でした。
せっかくの良い機会ですので、今回は柔術的逆算思考について書いていこうと思います。
柔術迷子になってから抜け出すまでの思考
柔術は技もポジションも多すぎて困る
トップポジションとボトムポジションはどっちが試合を有利に展開出来ると思いますか?
こんなお題を飲み会で設定しようものなら、答えのない楽しい議論が延々と続いて、答えが出ずにルーチ累積で全員失格になります(笑)
色帯になるとある程度どっちで行くかは見えてくると思いますが、白帯の頃はよくわからないままなんとなくやっている人も多いでしょう。しかもボトムをとってもデラやスパイダーやクローズドといったガードがありますし、トップでも完全に両足で立つ人もいれば、片膝立ててコンバトベースの人もいれば、低いコンバットベースの人もいます。そこからハーフになったり、もどしたり。同じ展開は2度と来ないと思われるぐらい複雑です。
私はこの無限に広がる展開の中から自分にあったものを選ぶということが苦手です。特に白帯の頃はどういう基準で何を選んだら良いかよくわからず、どの技も中途半端でテクニックの時間にやったことがあるけどスパーリングでは出せない技が積み上がっていく感じでした。(スパーリングで使いこなせなくても技を知っているだけでも意味があることはわかっています。)
それを図にするとこんな感じでしょうか。
例えばデラヒーバを起点に考えても、バックテイクがあり、スイープがあり、他のガードへの変化もあって、器用に使いこなすことが出来ません。また、3つに絞り込んだとしても次のポジションで同じことが起こります。無限に広がる柔術の荒野で迷子になることは必至です。
柔術迷子状態でした。
三角絞めを起点に逆算して考えた
突然ですが、出口戦略ってご存知ですか?
ゴールから逆算して物事を考える思考方法です。インベスターZという投資を題材に扱った漫画のワンシーンがとてもわかり易く解説しているので引用させて頂きます。
柔術でもゴールから逆算するという発想に思考を変えてみましょう。
私は、三角絞めをゴールに(勝手に)設定しました。
図にするとこんなイメージです。
すべてのポジションを三角絞めへのルートと思って、どのポジションからどう移動していけば三角絞めにたどり着けるのかという視点で柔術に取り組むようになりました。覚えが悪い私にとって三角絞めから逆算して整理したことでやるべきことが明確になり、スパーリングや試合で迷うことが減りました。
柔術迷子からの脱却です。
逆算して考えたら三角絞め以降の展開が覚えやすくなった
三角絞めに辿り着いてもそこで終わりではありません。
入れてからフィニッシュまでは、腕を流して、足の絞まりをタイトにして、頭を引いて圧迫するといったプロセスが続きます。もちろん、それだけではなく関節技やスイープなど展開は無限にあります。
しかし、無限にあると思われる展開もここまで状況が限定されてしまえば有限と言えるでしょう。しかもここまでの思考プロセスもあり、ゴールが近いことは意識出来ているので柔術迷子になりにくいはずです。
この部分も柔術マップにすることが出来ます。マップに落とし込んだのがこちら。
相手のリアクションを見てやることをその場に応じて瞬時に考える必要がありますが、三角絞めだけに限定してしまえば、全体像を頭に叩き込むことが出来ました。
三角絞めに入れてからの展開がたくさんあるように、腕十字の形になってからは腕十字の展開があり、十字絞めの形になってからは十字絞めの展開があることでしょう。技を絞れずに、多くの技に散らかってしまうと覚えることが増えてしまいます。私にはそれが消化しきれませんでした。ラーメンで例えるなら、麺大盛りの全部入りを注文したけど食べていくうちに胃がもたれて気持ち悪くなって吐いちゃうみたいな感じでしょうか?このたとえは違ったか。。。
このように逆算してゴールを限定し、ゴールに合わせた技に絞りこみ、頭に入りやすくした状態で練習に取り組んでいました。そうしたら三角絞めの部分が研鑽されて、試合でもかかるようになりました。
とは言っても三角絞めだけでは限界はやってくる
三角絞めから逆算して考えたことによって、三角絞めの為の試行錯誤を何度も繰り返し、三角絞めで極めて勝つことも多くなりました。
しかし、相手が強くなればなるほど、三角絞め頼みの展開では勝ちにくくなります。逆に言えば三角絞めしかないので、三角絞めに入れれないと私は勝つ方法がありません。
ここで壁にぶつかります。
次に考えたのは、スイープしてトップをキープすることです。これまでの三角絞めを活かしつつ新たなオプションを練習するようになりました。
ある程度三角絞めが出来るようになってからはこのように方針を少し変えて柔術に厚みが増すように変えました。
図にするとこんな感じです。
実際に出口にスイープ&キープに取り組むようになったのは2017年になってからです。それが実際の結果が2018年から表れているので見てみましょう。
2017年
勝った試合 10
極めて勝った試合 7(極め率70%)2018年
勝った試合 9
極めて勝った試合 4(極め率44%)
私の極め技は三角絞めと糸通しからのアームロックしかありませんので、極めはほぼ三角絞めです。
勝った試合に占める極め率が2018年に低下しています。
これは極め力が落ちたのではなく、私が三角絞め以外の戦い方も出来るようになってきたことの表れです(と勝手に思っている)。
早いもので柔術をはじめて約7年経過しましたが、ポイントゲームが少しずつ出来るようになってきたようです。進化の速度が遅いなりにも自分の柔術が前に進んでいることを(勝手に)実感しています。
ゴールから逆算して考えられた教則動画
世の中には、ゴールから逆算して考えたと思われる教則動画も存在しております。いくつか紹介させて頂きます。
Jason Scully
知る人ぞ知る元祖柔術Youtuberと言えば、Jason Scullyではないでしょうか。Jason Scullyが何者なのかはよく知りませんが、ゴールから逆算して、三角絞めの入り方52パターンとかオモプラッタの入り方37パターンとかそれ系の動画が多いです。
Edwin Najmi DVD
現代の三角絞め王と言えば、エドウィン・ナジミ選手ではないでしょうか。
そのエドウィン・ナジミ選手がゴールを三角絞めにした逆算思考に基づいた教則DVDを出しています。飛びつき系のエントリーが多いので、見ていて面白いです。
金古一朗先生 シュラプネルメソッドvol1 三角絞め
三角絞め研究所にも登場頂いたことがかるシュラプネル柔術の金古先生です。
この動画も三角絞めへのエントリーと三角絞めに入れた後の展開に絞り込んだ教材です。三角絞めの中ではベーシックな技が中心ですが、「ここで頭の向きをこっちにずらす」と言った感じで、技一つ一つのディテールをキッチリ言語化している所がとってもありがたいです。
三角絞めをやってみたい入門者から得意の三角絞めを更に尖らせたい人まで多くの気付きが詰まった作品です。
追記:レビュー書きました。
まとめ:柔術迷子になったらゴールから逆算して考えよう
仕事や何かの締切に向けて取り組んでいる際に、「締めが○日だからその1週間前にはこれぐらいの状態で、3週間前だとここまで出来ていれば大丈夫か」的に物事を考えたことは誰しもがあると思います。我々は「逆算して考える」ことは日常的に行っているのです。
その思考方法を柔術に応用させて「三角絞めにどうやったらたどり着くか」から逆算して柔術に取り組んでいたら、気がついたら三角絞めが得意になりました。
逆算思考は、特にどの技にするか絞りきれていない白帯の方は、最初に大きな柔術的指針を作るためにはとてもいいのではないでしょうか。逆に色帯の方はある程度型が出来ていると思いますので、言われなくても自然と取り組んでいることだと思います。
マット上のチェスとか知的格闘技と言われる柔術だからこそ、柔術迷子にならずに冷静に頭で考え、自分にとって必要な技を取捨選択し、自分の柔術を築き上げましょう。
以上「三角絞めから逆算して考えたら柔術迷子を脱却して強くなった話」でした。
オマケ
とってもわかりやすくかつ面白く投資について学べます。オススメ。
追記:
複数の方から「なぜゴールを三角絞めに設定したのか?」という質問がありましたので追記します。PRIDEでノゲイラがやっているのがカッコよかったから自分もやってみたかっただけです。あんまり深い理由はないです(笑)
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