こんにちは、taikiです。
一部の読者に支持される柔術ビジネスブレイクダウンシリーズですが、残念なことにページビューの観点からは「柔術女子」とか「モテる」といったパワーワードには勝てません(涙)
しかし、確実に読んでくれる人がいる限り、頑張って書いていこうと思います。
今回も読者の方からリクエストがありました日本ブラジリアン柔術連盟(以下JBJJF)についてビジネス的な観点からブレイクダウンしてみようと思います。(財務分析を手伝ってくれた三瓶先生、ありがとうございました。)
決算書と公開情報から読み取れるJBJJFの現在
JBJJFは決算書を公式サイトで公開しています。
決算書と聞くと財務や会計に馴染みのない人は抵抗があるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。家計簿ぐらいに考えれば十分です。
縁もゆかりもない会社の決算書を見ても数字の羅列にしか見えません。しかし、柔術をやっている人がJBJJFの決算書を見るといろんなことを情報として読み取れます。JBJJFの取り組みが具体的な数値と結びついて立体的に見えて来るのです。そんな側面をいくつか切り出して考えてみましょう。
財務と会計を勉強したいなぁと言う方はこれをキッカケに取り組んでみてはどうでしょうか。
損益計算書(PL)から読み取れる情報
本題に入る前に損益決算書(PL)とは何か説明しておきましょう。
損益計算書は、会社の一会計期間における経営成績を示す決算書です。 会社の経営成績を収益(かせぎ)と費用(コスト)とを対比して、その差額として利益(もうけ)を示すものです。 別名「Profit&Loss Statement」(PL)とも呼びます。
出所:中小企業庁
損益計算書(PL)がわかった所で、収益と費用の観点から見ていきましょう。
損益計算書(PL)からわかる近年の主な取り組み
- 2016年度にTOTOの助成金(437万円)を獲得
- 2016年度に広告費(537万円)を投入して、大会数を増やし、収益を拡大させた
TOTOの助成金をうまく成長資金として広告費と大会運営費にあてて、攻めの経営をやっているように見えます。
↓こんな感じで2016年頃からTOTOのロゴが入るようになりました。気付いてました?私は職業柄、「あ!スポンサーついた〜」と気になっていました。
各大会別損益から読み取れる情報
続いて、開催大会数の推移及び大会個別の損益を見ていきましょう。
2015年度以前は決算書から拾って、2016年度以降はWebサイトから情報を拾っています。2016年以降にはIBJJF主催の大会も入っているので数値として整合性がとれていない可能性がありますが、大勢に影響はないのでお許しください。
大会数が増加傾向にあることは明らかですね。
2017年度は決算書がまだ公表されていないので、収支と紐付けることは出来ませんが、大会数が増えているのは皆様も実感している通りだと思います。
次は、2016年度の主要な大会個別の損益を見てみましょう。
大会個別損益からわかること
- マスター大会は規模が大きく収益貢献が大きい
- アダルト主体の全日本選手権は収益的には苦戦
- 地方大会・ローカル大会は主要大会に比べると小規模であり、不採算な大会もある
貸借対照表(BS)から読み取れる情報
こちらも中身に入る前に貸借対照表(BS)とは何か説明しておきましょう。
貸借対照表は、会社の期末における財政状態(資産・負債・純資産の状態)を示す決算書です。
Balance Sheet(BS)とも呼びます。
出所:中小企業庁
その組織がどのぐらいお金や資産や借金を持っているかを整理したデータです。
貸借対照表(BS)から読み取れる情報も図にしたかったのですが、上手く図にできなかったのでポイントだけ解説したいと思います。
貸借対照表(BS)から読み取れる情報
- 無借金経営
- 運転資金中心の少額資産と少額負債
- 固定資産を持たない身軽な経営
ポイントと言っても財務知識がないとわかりづらいですかね。
誤解を恐れずにわかりやすく言うと「無駄のない身軽な状態」です。柔術で例えるなら減量なしでナチュラルで試合にいつでも出られる状態といったところでしょうか。
ちなみに借金を柔術に例えるなら、身の丈にあった少額の借金はプロテインみたいなもので、身の丈を超えた巨額の借金はステロイドです。借金自体は悪ではなくて、うまく使いこなして大きく事業を成長させることも当然あります。使い方しだいです。
JBJJFはナチュラルで鶏肉と大豆で頑張っている感じです。その健全さがうまく伝わったでしょうか(笑)
考察:これらの情報を統合して考えると見えてくるもの
決算書や大会の損益データを元に見てきました。ここからは読み取った情報を元に、その意味合いを吟味してみましょう。
JBJJFの基本思想を理解しよう
意味合いを吟味する前に、JBJJFの基本思想を理解する必要があります。
JBJJFが何を考えて、どんな目的で運営しているのかを理解をしなくては、物事の核心に迫ることは出来ません。
技のコンセプトを理解せずに、形だけを真似しても出来るようにならないのと一緒ですね。
目的:
当法人はブラジリアン柔術の普及および選手強化並びに指導者育成、資格認定に関する事業を行うことにより、日本のスポーツ文化の発展と国民の健全な心身の発達に寄与することを目的として次の事業を行う。
大きくは日本のスポーツ文化うんぬんかんぬんですが、ひとことで言うと「ブラジリアン柔術の普及」に尽きるでしょう。
利益に対する考え方:
(剰余金の処分制限)
当法人は、会員その他の者に対し剰余金の分配をすることはできない。会員その他の者に対する剰余金の分配をする社員総会の決議は無効とする。(残余財産の帰属)
当法人が解散等により清算するときに残存する財産は、社員総会の決議を経て、当法人と類似の事業を目的とする他の公益法人に贈与するものとする。
ちょっと固い言葉で書いてありますが、わかりやすく言うと「どんなに儲かっても利益は中の人で好き勝手に分配出来ないし、解散したらお金は公益法人に寄付します」ということです。(給与で抜くとか交際費でハデに遊ぶとかそういう細かい話は一旦置いておく。)
つまり、柔術の普及が目的であって、儲ける為にある営利組織じゃないと言うことです。
本当に中の人が全員そう考えているかまでは検証出来ませんが、少なくともそういうことは公式サイトで謳っているわけですから、その前提で話を進めましょう。
攻める経営の先に見据えているものは柔術の普及
JBJJFは大会数を増やして拡大路線を進んでいるように見えます。その一方で、大会単体で見ると、特にローカル大会は規模も小さく、収益的に赤字の大会もあります。
財務的な数値のみをみて、「儲からないから地方大会はやめろ」という意見もあるでしょうが、JBJJFの「柔術の普及」という理念に基づいて考えるといかに意味のない議論かわかりますよね。(もちろん、他の大会が黒字だから出来ることはわかっています。)
地方でいきなり黒字で大きくはじめることは不可能です。ちょっとだけ練習した技が試合でいきなり出せないのと一緒で、地味にコツコツと継続したモノにしか結果はついてきません。
また、「大会数を増やしすぎると他の団体と試合の日程が被ってしまい、選手が分散してよくない」という意見もあるでしょう。短期的な視点で考えるとその通りかもしれません。
しかし、ワールドマスターのような世界大会に行くとマットが21面もあったり、女子の試合が日本よりも多く活発だったりして柔術の普及に対してはギャップを感じずにはいられません。
JBJJFは大会単体の良い・悪いといった短期的な視点で物事を考えるのではなく、競技人口が増えて選手層が厚くなり、柔術がもっと身近になった未来を見据えた中長期的な視点で考えているのではないでしょうか。小規模で採算の見込めないローカル大会は未来への投資として位置付けていると思われます。
他の団体と日程が被ることも選手の出場機会や選択肢が増えて業界全体としてはポジティブだぐらいに捉えているでしょう。中井先生とかそれぐらい広い心で全体を大きく捉えていると思いませんか?
当然、運営スタッフの皆様も専業の方ばかりじゃないと思いますので、この拡大路線に伴う痛みはあるでしょう。選手とレフリーやスタッフを兼任する人に助けてもらいながら、拡大路線に伴う痛みを乗り越えようとしています。そんな状況を少なくとも我々のような柔術をやっている者(特に選手としてお世話になっている人)だけでも理解しないといけません。
このような想いを持って、10年、20年後の将来を見据えた「攻める経営」をしているのではないでしょうか。
まとめ:JBJJFは未来を見据えて攻めている
今回は、決算書と公式サイトの公開情報を切り口にJBJJFの理念と今、見据えているものを勝手に想像して考察しました。
これが正解なのか不正解なのかはわかりません。
少なくとも今ある断片的な情報をつなぎ合わせて考えると私にはこのように見えました。(ちなみに私はJBJJFの回し者でもなんでもありません。客観的に情報に基づいて考えただけです。)
答え合わせをしてみたいので、機会があればJBJJFの方に直接お話を聞きたいですね。
以上「決算書と公式サイトで読み解く日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)」でした。
研究所からは以上です。
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